Cuisses de grenouilles à la provençale
ベルナルド・ベルトルッチ監督の5時間を超す大作『1900年 Novecento』で、主人公のオルモがまだ少年時代、小川に入りこんで熱心にカエルをとっている。熱い太陽、草いきれや小川の藻のにおいが感じられるような名シーンだ。このカエルたち、ゆでられたり、炒められたりして、ささやかな晩ごはんの足しになったのだろう。
さて、そのカエルの足はどこで手に入るのだろう。ノエルが近づくと魚屋に出ることもあるけれど、今の季節なら、冷凍もので間に合わせることにしよう。アントレにしたいので4人分で500グラムもあれば十分で、対になっている足の肉が28本ほどになるだろう。まず冷蔵庫で半日ほどかけてゆっくりと解凍する。背骨のところを、足がバラバラにならないように少しだけ残して切りとる。足の先端の細いところも関節部で切りとる。ニンニクとパセリの葉をみじん切りにする。これで下準備完了だ。
この分量だと2回に分けて炒めることになる。カエルの肉に軽く塩をし、牛乳にさっと浸し、小麦粉をまぶし、余分な粉をはたき落とす。大きなフライパンに油をとって強火にかけ、熱くなったらカエルの肉を入れる。フライパンを勢いよく動かして肉をひっくり返したら、バター半量を入れる。さらにニンニクを加えて混ぜ合わせ、色がついてきたらパセリを加え、塩、コショウ。もう一度この作業をくり返し、大皿に盛りあげ、最後にレモンのしぼり汁をかけまわせばでき上がり。レモンを添える。
フォークやナイフで食べるのはちょっと無理なので、両手の親指と人差し指で軽くつまんで、肉をかじりとることにしよう。カエル肉ならではの、鶏肉に近いやさしい味わいが、レモン、ニンニク、パセリ、バターの風味と一つになって美味美味。カエルの肉などと毛嫌いせずに挑戦してほしい一品だ。指についた油をとるために、ぬるま湯にレモンの輪切りを入れたフィンガーボウルを添える心づかいが大切だ。ワインは、タヴェルなどのロゼにしたい。(真)
4人分:カエルのもも肉(Picardなどで手に入る冷凍もの)500g、ニンニクの量は好みで6片~10片、パセリ半束、牛乳適量、小麦粉適量、油、バター80g、レモン1個、塩、コショウ
「カエルの白ワイン風味」もあわせてご覧ください。
Grenouille
A・デュマの 『Mon dictionnaire de cuisine』に、16世紀からパリの高級レストランでカエルの足の料理が供されていたと出ている。現在、フランスでは商業用のカエルの捕獲が禁止されているので、ピカールの包装に 「ramassée en Indonésie」と記されているように、ほとんどがインドネシアからの輸入品。インドネシアでは沼地や水田でのカエル漁が盛んで、ジャカルタなどにはカエル足料理専門店 (中華系)もある。最近は、カエルの減少を懸念する声も上がっているし、今回のレシピも、年に数度のごちそうくらいにしておきたい。