セーヌ河岸を歩きながら、そこが2千年前はどんな様子だったのかを体験できるVR「パリの起源 Les Origines de Paris」。VRは屋内が多いが、こちらはパリ市庁舎近くのルイ・フィリップ橋からポン・ヌフ橋までの遊歩道1.2kmを歩きながら、10ヵ所ほどで立ち止まってゴーグルを目にあててタイムスリップするものだ。

パリ最古のヒトの形跡は、15区アンリ・ファルマン(Henri-Farman)通り周辺で発見された中石器時代(−9000〜−5000年)のもの。狩猟と採集で生きていた人々が、数日間から数週間、狩猟のために構えた陣とされ、火を焚いた跡や燧石(ひうちいし)が発掘されている。またベルシー地区では、新石器時代 (–6500 à –4500) の建物の跡や丸木舟が出土している。
このVR「パリの起源」ではそれよりもっと今に近い、2千年くらい前からスタートする。その頃セーヌ川周辺は「マレ」の地名に残るとおり、一面の湿地帯。紀元前3世紀ころから住んでいた「パリシイ人」は紀元前53年、ローマ軍との戦いに敗れ、その支配下におかれる。しかし、その時代、「リュテス」と呼ばれる当時のパリに南北、東西を結ぶ道が敷かれ、シテ島、左岸5区あたりに市街地が築かれていく。

セーヌ川を中心に起きた出来事と、街が築かれていく様子、大きくなってゆくパリの、各時代の人口がゴーグルで見える画面に示される。9世紀のバイキングのパリ襲撃、ノートル・ダム大聖堂の建設、ペスト、ポントーシャンジュ橋やポンヌフ橋の上に建ち並んでいた商店の火災。フランス革命では対岸のコンシエルジュリーの監獄からは馬車で王妃が処刑台へ連れられてゆく。百貨店ラ・サマリテーヌのオープン、そして最後はエッフェル塔が披露される1899年の万博だ。
それぞれの時代に「行ける/居られる」のは、特に冒頭の2千年前のパリに行けたのは感動的だった。とはいえ、その後も、空から眺めたり、小麦粉をセーヌ川を運ぶ舟に乗ったり、時にはペストで死んだ人の遺体を運んでいたり、バイキングの火矢が飛んできたり。2千年の旅に興奮しっぱなしだった。(六)
集合・スタート地点

VR参加者にはヘッドホンとゴーグルが与えられる。常時装着したままのヘッドホンから、ナレーションと大河ドラマ風音楽、「ここでゴーグルを」などの指示が入る。ゴーグルは装着というよりも、双眼鏡を使うように目に当てる。グループには引率者がつき、その人が背負ったリュックから位置情報とともに映像やナレーションが発信されるので、離れないように歩く。




Les Origines de Paris
Adresse : Berges Rive Droite, Voie Georges Pompidou, sous le Pont Louis-Philippe , 75004 Paris , Franceアクセス : Pont-Marie/Hôtel de Ville
URL : https://originesdeparis.com/
28€(16歳以上)/ 25€(65歳以上、学生ほか)/ 19€(8歳〜15歳)
