ル・コルビュジエと、彼のいとこピエール・ジャンヌレが設計した 「サヴォア邸」。この20世紀建築の傑作とされる邸内で、フランソワーズ・ペトロヴィッチ(1964-)の絵画・彫刻展が開催中だ。
ペトロヴィッチは、この年頭には国立図書館、現在開催中のロマン派美術館での展覧会、オービュッソンの国際タピスリー・センターでは彼女の絵を巨大作品に織るプロジェクトがスタートするなど、今、超売れっ子のアーティスト。今回は、国の重要な建造物の修復と管理運営を行う国立歴史的建造物センター Centre des Monuments Nationaux がペトロヴィッチをサヴォア邸に招いての展覧会となった。
展覧会は〈Habiter la Villa (サヴォア邸に住む)〉と題されている。これは、1928年にこの別荘の設計をル・コルビュジエに依頼したウジェニー・サヴォワ夫人のようにこの邸宅に住んでみたい、とペトロヴィッチが思ったことを起点に創作を行なったことに由来する。作品ばかりが存在感を放つ派手なものではなく、「さりげなく置かれた日用品のような」、空間に溶け込むような日常的なものを作りたかった、とペトロヴィッチは語っている。
展示するそれぞれの空間に合うサイズのキャンバスを用い、ル・コルビュジエが「建築のための色彩設計 Polychromie architecturale」として体系づけた色のなかから、このサヴォア邸に使用した色*を使って制作。グレー、オークル、淡いピンク色、さまざまなブルー、明度の違うグリーンなどの色で、鳥、花、サヴォア邸の住人であったウジェニー夫人やサヴォア家の息子らしき人物も描かれている。
すっきりとした機能的な美しさをたたえたサヴォア邸は、家具がほとんど置かれていないため、居間も寝室も広くガランとした印象だが、やわらかいタッチで描かれたペトロヴィッチの絵が、誰かが住んでいる気配のようなものをもらたしている。サヴォア邸を「明るい時」と呼んだウジェニー夫人が住んでいた時の雰囲気に少し近づいているのかもしれない。(六)9月24日まで
*ル・コルビュジエは、色も、空間を形成する際の重要な要素と考え、色による視覚的な効果とその使用を理論的に体系づけた。そしてスイスの壁紙メーカー Salubraの依頼で、1931年と59年の2回で合計63色からなる壁紙用の色見本帳 « カラー・キーボード clavier chromatique »を作った。
2022年サヴォア邸のペンキを塗り替える際には、建設当時の施工会社の記録や、白黒の写真やフィルムの明度などから、建設当時に使われた8色がつきとめられた。今はその色に塗られ、建設当時の状態に近くなった。
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Villa Savoye
Adresse : 82 rue de Villiers, 78300 Poissy , FranceTEL : 01 39 65 01 06
アクセス : SNCFのJ線かRER-A線でPoissy下車、バス50番La Coudraie行き、Villa Savoye下車 。
URL : https://www.villa-savoye.fr/
月休、10h - 18。入場8€ 、26歳未満無料。チケット予約はこちら→https://tickets.monuments-nationaux.fr/fr-FR/produits