
『Valeur sentimentale』
「優しさこそが新しいパンクに」ヨアキム・トリアー監督
夏のバカンスが終わるこの時期、映画館で真っ先に見てほしいカンヌ映画祭グランプリ受賞作。監督はノルウェーとデンマークの国籍を持つヨアキム・トリアー。父と娘の関係を見届けるベルイマン&チェーホフ風家族劇である。

女優のノラ(レナーテ・レインスヴェ)のもとへ、疎遠だった映画監督の父グスタフ(ステラン・スカルスガルド)が現れる。父は娘に出演依頼をするも返事はノー。役は代わりに若手ハリウッドスターの手に。映画は家族の過去の傷まであぶり出す。
監督は描きたかったものについて、「和解、家族、時間」と回答。「生きてゆく中で、自分も人生について広い視野を持つようになり、複雑な親の心の中に傷ついた子どもがいることに気づいた。グスタフは複雑な父親だが、アーティストでもあり二つの言語を操る。コミュニケーションの脆弱性や、家族間の会話の欠如について語りながら、芸術がそこにいかに関われるのかを探りたかった」。

トリアー作品常連のレインスヴェとアンデルシュ・ダニエルセン・リーの横には、スター役で抜擢された、本人もハリウッドスターのエル・ファニングが。彼女は「ヨアキム・トリアーの夏」と書かれたTシャツを着て登場した。前作『わたしは最悪。』のファンだった彼女は、監督との仕事を切望していたという。「脚本を読んだ瞬間に圧倒された。こんなに感動的でニュアンスに富んだ脚本は稀」と絶賛。
傷つく人物たちを柔らかく包み込む物語だ。音楽好きでパンク文化に親しんできた監督は言う。「世界は厳しい場所になった。だからこそ弱く傷つきやすい人を描く必要があると考えた。結論は、優しさこそが新しいパンクになるということ」。北欧の俊才による新しい章の始まりだ。(瑞)

