12月8日、欧州チャンピオンズリーグの試合が開始13分で中断された。審判が人種差別的な言葉を発したことに対して、両チーム全選手がプレーを中断し、退場するという形で抗議をした。
パリのスタジアム「パルク・デ・プランス」で行われたPSG(パリ・サンジェルマン)対バシャクシェヒル(トルコ)の試合。4分目あたりからバシャクシェヒルのピエール・ウェボ・アシスタントコーチが、審判のジャッジに激しく反応していたのを見て、13分目ころ、ルーマニア人の第4審判が他の審判との会話のなかで「ネグロ」と呼んだとされる。
バシャクシェヒルの補欠デンバ・バ選手がその言葉を聞き「なぜネグロという言葉を使った?」と主審に詰め寄ると、ピエール・ウェボ本人、そしてネイマールやエンバッペらが加勢。エンバッペが「この人(審判)とはプレーできない」と言い放つビデオもある。両チームは退場、試合は中断を余儀なくされ、試合は翌日の12月9日に、審判を入れ替えて再開されることになった。
翌日12月9日の試合再開の際は、コロナ対策のために空っぽの観客席に ”Paris uni contre le racisme” (パリは団結して人種差別に抗議する)という横断幕が掲げられ、選手たちは “No to racism””と胸に書かれたTシャツを着た。試合前にはフィールド中央で選手たちが片膝をつき、拳を掲げた。
「審判」するべき人物からの差別的な言葉は嘆かわしいばかりだが、それを、両チームの選手や他のスタッフ全員が、差別された人への連帯を表明し、差別を断固拒否する意思を「退場」という形で表したのは画期的だ。
リベラシオン紙がインタビューしたアブデスラム・ウワッドゥ選手はフィールドで差別を受けた経験がある。罵言を浴びせられ審判に訴えても無視されたこともあった。この試合を観て「私たちは革命に立ち会った…選手たちが一丸となって「ストップ」と言うこの日を、何年も夢見ていた。指導陣は、スポンサーに対するイメージ、すなわちお金のことなど別の部分を考慮するからあてにはできない。でも火曜日(試合の日)から、選手たちが決定権を手に握った」と語った。
このところ、PSGのネイマールが、マルセイユのチームの選手に差別的な言葉を浴びせれらたり、パリ17区の音楽スタジオで、警察3人が無抵抗の音楽プロデューサーに暴力をふるう映像がメディアによって拡散されたりした。エンバッペ、グリーズマン、ウンチチらは、自分のSNS上で人種差別と暴力を糾弾した。
差別がなくなるのがベストなのは言うまでもないが、新しい世代の選手たちが、SNSを使って若者たちにメッセージを発信している。暗いニュースが続くなか、将来に一筋の光がさすような出来事だった。