現在、トゥール市のトゥール城では、ポーランド人の写真家、ゾフィー・リデ展“Zofia Rydet, Répertoire, 1978-1990 ”展が開催されている。
2015年にワルシャワ現代美術館にて、映像財団、ゾフィア・リデ財団、グリヴィツェ美術館の協力により開催された初の大回顧展だ。300点の写真を、3つのテーマから紹介する。もちろんフランスでも初めてのリデ回顧展となる。
還暦も過ぎ、写真家としてすでに名声を得ていたリデは、1978年、67歳で母国ポーランドの中央部から北東部スヴァウキやシレジアの100以上の街や村落を訪れ、 家屋のなかで住民を撮影した。« Répertoire sociologique 社会学的目録»と題された、2万点にも及ぶ象徴的な作品群は、 椅子やベッドに腰掛けるカップル、家族、横たわる病人などを、壁面を背景に一定の高さから広角レンズで撮るという手法で、一切の演出を加えず、ありのままの姿でとらえている。
家屋は暗いせいもあるだろう。フラッシュの閃光に、室内の質素な家具や装飾品、最低必需品の生活の道具などが浮かび上がる。 壁面にかけられた絵画や写真は、厚い信仰心や政治思考も訴えている。瞬時に、被写体の精神性が飛び込んでくるかのような鋭い表現力だ。それは、芸術としてではなく、社会を考察するための写真であることを説いている。
自宅の玄関に立つ主婦たちを撮影した« Femmes sur le pas de la porte 玄関前の女性たち» シリーズでは、家庭を守る責任感と、深い愛情、「勇敢さ」さえ漂う。内と外の敷居に立つ女性は、女性の曖昧な社会的立場を示唆しているとも読める。
« Professions »(職業)は、失われつつある街角の商人や、職人たちの職場を記録した作品だ。
外から室内を覗くように、人々の生活を窓枠やテレビ画面のような構図で定型化した作品群は、たゆまなく流れる時を記録した、未完結物語である。
2004年から前衛的な観点や、斬新な感覚の20世紀の写真家を有名無名問わず紹介しているパリのジュドポーム美術館の展覧会だが、2010年からはトゥール城でも、このような展示を行っている。今までにロバート・キャパやサビンヌ・ヴァイス展が開かれた。(浦)
“Zofia Rydet, Répertoire, 1978-1990 ”展 JEU DE PAUME — CHÂTEAU DE TOURS 火〜日 : 14 h-18 h、月曜休館。 2017年5月28日迄
JEU DE PAUME — CHÂTEAU DE TOURS
Adresse : 25 av André Malraux , 37000 Tours , FranceTEL : 02 47 21 61 95
URL : www.tours.fr