
マクロン大統領は9月22日、国連本部で開催された、フランス、サウジアラビア主催のイスラエル=パレスチナ2国家共存和平を推進する会議で、パレスチナを国家として正式に承認した。
当初はイスラエルを支持していた大統領だが、戦争長期化とともに態度が変わり、今年4月にはパレスチナ国家承認の意向を表明していた。大統領は22日の演説のなかで、ガザ住民は強制移動、殺戮、飢餓に苦しみ、ハマスの軍事力も弱体化している状況から、戦争継続はもはや正当化されないと強調。唯一の持続的和平への道は2国家解決推進の前提であるパレスチナ国家承認であり、それは「ハマスの敗北」を意味するとした。将来はハマスの解体と武装解除を行った上でパレスチナ当局が他国や安保理の支援のもとに安全支援部隊を設置。人質解放が終了し停戦すればパレスチナに仏大使館を設立するという道筋を示した。また、アラブ諸国もイスラエルを国家承認すべきとした。
パレスチナはそれまで約150ヵ国が国家承認していたが、欧米諸国では西、アイルランドなどごく少数。今月21日にはカナダ、豪、英らが、22日は仏に続いてルクセンブルク、ベルギーなど計10ヵ国が承認。ただし、ホロコーストの歴史を持つドイツは2国家解決の最終段階に承認するとし、伊は承認は「ハマスへの贈り物」と米トランプ政権と足並みをそろえた。仏国内では、左派諸党は「遅すぎる」としながらも一様に歓迎しつつイスラエルへの制裁措置を政府に求めた。一方、右派の共和党は「無条件で承認するのはハマスに勝利を贈ること」と批判。極右、国民連合のルペン氏は、「マクロンはパレスチナ国ではなくハマス国を承認した」と皮肉った。
フランス国内では、22日のパレスチナ承認に合わせて、社会党などが市町村役場にパレスチナの旗を掲げることを呼びかけ、内務省によると左派の市町村の約86が応じた。しかし、承認に反対する共和党のルタイヨー(暫定)内相は「公共サービスの中立性」を理由に各県知事に行政裁判所に訴えてこれを阻止するよう通達を出した。早くから旗を揚げていたパリ郊外のマラコフ市では旗を降ろすよう行政裁判所の判決が20日に出たが、同市市長は予定通り22日に降ろすと反発。パリ市はエッフェル塔上の大スクリーンに、パレスチナとイスラエルの旗の間にオリーブの枝をくわえた鳩を映写し、2国家解決による平和を訴えた。
米とイスラエルが反発する限りマクロン大統領が示したような和平の道程は困難であり、今回の10ヵ国による国家承認は象徴的な意味しかないと言われる。だが、意思を示すことによって国際社会の態度を明示することには大きな意味があるだろう。(し)
