近代絵画の金字塔であるピカソの 「アヴィニョンの娘たち」にはアフリカの仮面が描かれている。ピカソと非西洋美術の関わりは知られているが、彼はどのようにしてアフリカやオセアニアの美術に興味を持ったのだろうか。この展覧会は青年時代から晩年まで年代順に追い、アフリカやオセアニアの彫刻、仮面がピカソの生活の一部になっていたことを強調して見せる。
1907年、トロカデロの民俗博物館で仮面を見たのが、その後の芸術家人生を左右する決定的瞬間だった。人間と未知の力のあいだに介在する仮面を見て、「これが絵の本質だと分かった。絵とは美的なプロセスではなく、魔術的なものだ」とのちに語っている。会場にはピカソ作品と彫刻や仮面を並べて展示してあり、ピカソがそれらの造形から影響を受けたことは一目瞭然だ。
アトリエの写真も多い。アフリカやオセアニアの仮面・彫刻に赤でマル印をつけて、膨大な数の仮面や彫刻があった場所を示している。
題名の 「プリミティフ」は、「未開」ではなく、「人間の根本的な本質」という意味でつけられた。非西洋文化圏に残る人間の源に降りていったピカソが、暴力や情念といった人類に通底する力を引き出して芸術世界を作り上げたことは興味深い。(羽)
ケ・ブランリー美術館(月休)7月23日まで