この秋、パリはピカソ (1881-1973)づくしだ。ピカソ美術館の 「傑作」展、ポンピドゥ・センターのキュビスム展、そして1900〜06年のピカソを克明に追ったオルセーの本展。これほど多くの青の時代、バラ色の時代のピカソ作品を見られる機会はめったにない。今秋パリの西洋美術展のベスト5に入るだろう。
本展では、ピカソが19歳でパリに出て来てからの作品を扱っているので、17歳のとき病気の姉をモデルに描いた大作をピカソ美術館で見てからオルセーを訪れると、「ピカソ」になりつつあるピカソをより早い時代から辿ることができる。オルセーで注目すべきは、特に青の時代だ。恋に狂ってモンマルトルで自殺したバルセロナ時代からの親友の死をきっかけに、青の時代が始まった。その死顔や、子どものいる服役中の娼婦をモデルに描いた絵は息が詰まりそうなほど暗く、後のピカソには見られない痛みや寂寥感が伝わってくる。1905年頃、サーカスの人々や当時の恋人マドレーヌを描いたバラ色の時代になる。しかし、青の時代が強烈すぎて、これを見た後ではバラ色の時代は印象に残らない。本展は、アフリカの彫刻に刺激されたピカソがさらに変わりつつあるところで終わっている。(羽)
1月6日まで オルセー美術館