Photographier en Normandie 1840-1890 – Un dialogue pionnier entre les arts
ノルマンディーで写真を撮る 1840〜1890年 – 芸術間の先駆的対話
印象派150周年記念のイベントの中で、ルアーヴルのアンドレ・マルロー近代美術館(MuMa)が、印象派の画家たちが生きた時代のノルマンディーを当時の写真家たちが撮影した150点の写真とそれに関連した絵画を展示している。
それにしてもなぜ印象派とノルマンディーの写真が関わるのか。答えはいくつかある。まず、1840〜1890年の写真黎明期、ノルマンディーではパリに匹敵するほど写真撮影が盛んだった。その理由の一つに、この時代の鉄道の発達が挙げられる。ルーアン、ルアーヴル、ディエップなど、ノルマンディーの主要都市とパリが鉄道でつながり、パリから来やすくなった。ドーヴィルなどがパリの社交界の避暑地となり、写真が趣味のパリ人たちがノルマンディーでも撮影するようになった。初期の写真家はアマチュアで、写真を職業にしている人はおらず、学歴が高く、科学か美術を学んだ有産階級の人がほとんどだった。ノルマンディーを撮影した多くの地元のアマチュア写真家も、同じく裕福な人たちだった。
元々は画家で、革新的な写真技法と絵画のような構成の写真で有名なギュスターヴ・ル・グレイ(1820-1884)は、19世紀最高の写真家の1人。「写真家はアーティストになれる」と言った、芸術写真の先駆者だった。ルアーヴルや隣のサンタドレスを訪れ、空の風景と海の風景をモンタージュした海景写真など、多数の傑作を残している。ル・グレイの風景写真の光の当たり具合などは印象派の画家たちに大きな影響を与えた。1874年に第1回印象派展が開催されたパリのキャプシーヌ大通り35番地の建物は、写真家ナダール(1820-1910)のスタジオだったが、その前はル・グレイの写真スタジオで、パリ中の芸術家が集うサロンだったことも、印象派との縁として興味深い。
印象派絵画と写真の関連は、題材や構図の類似にもみられる。エトルタの断崖を撮ったアルフォンス・ダヴァンヌの「No.2 エトルタ 左の断崖」とクロード・モネの油彩「エトルタの嵐の海」はなんと似ていることか。
ルーアンのカテドラルを撮った写真とカテドラルを描いた絵にも同じことが言える。地理的に近い英国からは画家、作家など多くの文化人がノルマンディーにやってきた。その1人が、美術評論家・作家として名高く、水彩画家、さらにターナーのコレクターでもあったジョン・ラスキン(1819-1900)だ。ノルマンディーには、16歳の時初めて旅して以来、敬愛するターナーの足跡を辿るため度々訪れた。新婚旅行先にもルーアンを選ぶほどのノルマンディー好きだった。その彼がルーアンで撮ったダゲレオタイプの写真が英ランカスター大学に保存されており、本展で展示されている。ほとんどがカテドラルの写真だ。
ラスキンの写真には幻想的な美しさがある。写真も撮っていたことはあまり知られていないので、ここで見られる彼の作品は重要だ。写真に撮る前は鉛筆と水彩でカテドラルの一部をデッサンしたが、その難しさに音を上げた。奇しくも、ラスキンがデッサンした45年後の1892年に、モネもカテドラルを描く難しさを、その直後に妻となるアリス・オシュデに宛てた手紙に書いている。
本展で見たあまたの傑作の中で一番印象に残ったのは、女性写真家、ステファニー・ブルトン(1809-1895)の風景だ。ルーアン近くのフランクヴィル城を撮った作品には、ロマン派的な憂いとおとぎ話の世界のような魅力がある。1854年創立のフランス写真協会(SFP)に、1857年、会員として受け入れられた2番目の女性写真家である。1869年にパリに転居する前、長年ルーアンに住み、ノルマンディーの風景を撮った。SFPで展覧会を開いた他、1862年ロンドン万博、1867年パリ万博にも出品した。長らく埋もれていた作家だが、作品が見つかり、近年、再評価されつつある。(羽)9月22日まで
Musée d’art moderne André Malraux - MuMa
Adresse : 2 boulevard Clemenceau, 76600 Le Havre , FranceTEL : 02.3519.6262
アクセス : 国鉄サン・ラザールSaint-Lazare駅からル・アーヴル Le Havre 駅まで約2時間20分。国鉄ル・アーヴル駅から歩くと30分。または、①バス16番Mont Gaillard行きに乗り、4つ目の停留所MuMaで下車。徒歩4分 ②国鉄ル・アーヴル駅からトラムA線La Plage行きに乗り、Hôtel de Ville下車。そこからバス7番で停留所「Muma」下車。ル・アーヴル市内のバスとトラム路線図はhttps://reseau2024.transports-lia.fr/
URL : https://www.muma-lehavre.fr
月休、火〜金 : 11h-18h、土日:11h-19h 10€/6€