3月15日にオープンしたトゥールの 「オリヴィエ・ドゥブレ現代創作センター(CCC OD」で、抽象画家オリヴィエ・ドゥブレ(1920-99)の大展覧会を開催している。ドゥブレの作風は、「抒情的抽象」と呼ばれる、自由な動きで感情を表現する抽象画だ。
1964年にノルウェーで初めて個展を開いたのを機に、毎年ノルウェーを旅した。本展では、ノルウェーで描いた作品だけを集めた。例外はドゥブレがいつも戻って来た、彼の原風景といえるロワール河を描いた青い大作で、大展示室の正面にかかっている。旅のデッサン帖も展示されていて、こちらは具象だ。
ドゥブレは旅のデッサンをもとにアトリエに戻って制作するのではなく、画材を車に積んで旅をし、雄大な自然の中で、地面に何枚もキャンバスを広げて同時に数枚描いた。平らにして描くのが彼のスタイルだった。風景を前にして出てくる感情をその場で描く。夕方にはそれを車で持ち帰った。
絵の中には、押し黙った冬の光もあれば、透き通って跳ねるような明るい光もある。ドゥブレの絵を前にすると、絵がわかる、わからないという知的な理解以前の、本能的な感覚の喜びが湧き上がる。抽象はわからない、と言う人にこそ見てもらいたい展覧会だ。(羽)