独自の手法で歴史の記憶を浮かび上がらせるニコラ・ドーバンヌ(1983-)が、軍事博物館とパンテオンで個展を同時開催中だ。

軍事博物館では、1871年のパリ・コミューン弾圧から第二次世界大戦までの常設展の中に組み入れる形で、時代を表す彼の絵画、彫刻、写真、ビデオを展示する。デッサンや古い写真をフォトグラムで印刷した裏側に磁石を付けて、表面に鉄粉を定着させた、筆を使わないデッサンが彼の特徴だ。
コミューンで放火されたパリ市庁舎の作品はその一つ(下の画像)。テーマの政治性、社会性と意外な素材の組み合わせで強い印象を与える。
コンクリートの壁の中に赤く着色した砂糖を入れ、温めるとそこから血が出るように見える作品は、コミューンの147人がペール・ラシェーズ墓地の壁の前で、ヴェルサイユ政府軍から銃殺された事件が元になっている(冒頭の画像)。

© Nicolas Daubanes_Marc Domage_Adagp, Paris 2025
パンテオンで開催中の「影は光 場所の記憶」展では、戦場やナチスの強制収容所を題材にした巨大な鉄粉デッサンを展示。その中に、リヨンのモンリュック刑務所の廊下のデッサンがある(下の画像の奥に)。第二次大戦中、リヨンで、ゲシュタポの治安責任者クラウス・バルビーがユダヤ人を一斉検挙し、反独レジスタンスも収容して虐殺、拷問した場所だ。

作品を展示したニコラ・ドーバーヌ。Nicolas Daubanes, Prison de Montluc à Lyon, bâtiment cellulaire, rez-de-chaussée © P. Rosset
バルビーは戦後、戦争犯罪人としてこの刑務所に収監された。パンテオンでは死刑廃止に尽力した元法相、ロベール・バダンテールの展覧会が3月8日まで地下で開催されているが、バルビーはバダンテールの父を検挙し、強制収容所に送った責任者でもある。パンテオン入りしたバダンテールとの関わりも考えると展覧会の見方がより深まる。(羽)

Nicolas Daubanes, La mutinerie de Fontevraud : l’incendie de l’abbatiale, 2023
© Galerie Maubert / ADAGP, Paris, 2025
◉Panthéon パンテオン (3/8まで)
「Ombre est lumière. Mémoires des lieux.」展
Place Panthéon 5e
paris-pantheon.fr
無休 10h-18h。13€/欧州在住の26歳未満無料。
第1日曜無料。
◉Musée de l’Armée 軍事博物館 (5/17まで)
「Nicolas Daubanes. Un artiste contemporain」展
129 rue de Grenelle 7e
musee-armee.fr
無休10h-18h 第1金曜日22hまで。17€/12€。

Musée de l'Armée
Adresse : 129 rue de Grenelle , 75007 Paris , Franceアクセス : La Tour Maubourg / Invalides (8号線)Varenne(13号線)
URL : https://www.musee-armee.fr/accueil.html
毎日:10h - 18h。第一金曜日は22h閉館(10€)
