パリで開催中の2人の日本人アーティストの展覧会に共通するものを見た。ベネチア・ビエンナーレでのインスタレーションなどで知られる内藤礼と、パリ在住の井上織衣だ。
内藤は、小さな木のひとがたを彫って、広島の原爆で焼け残ったビンのそばに寄りそうように置いた。展示場には、靴を脱いで上がる。清潔な白い空間に、細長いテーブルがあり、焼け残ったビンと人形、一輪の花が3か所に置かれている。
ひとがたは、この世とあの世の中間地帯にいる存在のように感じられる。テーブルを囲んで鈴が天井から垂れ下がり、清浄な場所を守る結界を作っているかのようだ。ひとがたを見て、『ベルリン天使のうた』のリメイク映画『シティ・オブ・エンジェルズ』で、天使が死んでいく人のそばに黙って寄り添う場面を思い出した。ただそこにいるだけ、でもそこにいる存在だ。ひとがたは原爆で残った、内藤の故郷の広島の地に寄り添い、そこに生きる人に寄り添っている。
井上織衣は、本物の木の葉や花びら、枝に布や紙などの素材を合わせて、小さな虫や両生類を作った。土に戻る運命だった植物が、動物に変身してこの世界に残り続ける。植物と動物が種を超えて合体する。動物の目は生きているように愛らしい。小さくても一生懸命に生きている動物への作者の愛情が感じられる。
内藤も井上も「アニミズム」とは言っていないが、二人の背景にあるアニミズムの日本が作品から匂い立っている。(羽)
⚫︎ 3月18日まで
Rei Naito « émotions de croire » / 内藤 礼「信の感情」
パリ日本文化会館:101Bis Quai Branly 75015 Paris
⚫︎2月25日まで
Orie Inoue “Bruissements Alentour”
Galerie Gratadou Intuiti Paris : 16 rue des coutures saint-gervais 75003 Paris
+33 (0) 6 82 83 26 29
井上織衣サイト http://orieinoue.com/