Musée d’Art moderne de Troyes(MAM)
トロワ市立現代美術館
トロワ大聖堂の横にあるトロワ近代美術館の改修が完了し、4月16日にオープンした。2022年に改修が終わったは公開されていたが、もう半分も終了し全館が観られるように。幅広い人に訪れてもらおうと、5/12まで入場無料だ。
16〜17世紀に建造されたかつての司教館を利用した美術館は、ピエール&ドニーズ・レヴィ夫妻の美術品コレクション2000点を基盤に造られた。夫妻はラコステのニット製造で知られる地元ドヴァンレ社の社主だが、40年間で約4000点の美術品を蒐集し、その半分を国に寄贈。新しい作品も増えてはいるが、今でも収蔵品の8割がレヴィ夫妻のコレクションだ。
見学経路は2階、1850年代クールベ、ドガ、ミレーら写実派から始まる。野獣派ドラン、ブラック、第一エコール・ド・パリのスーチン、モディリアーニ、キュビズムの展示コーナーはグリ、ド・ラ・フレネーからピカソまで充実している。第二エコール・ド・パリともいわれるド・スタールや、流派に入れられないベルナール・ビュッフェ、バルチュスがデュフィと同じ部屋に展示されている。絵画の間には彫刻も配置され、ドガ、ロダン、マイヨール、ピカソ、ボナール、ザッキンなどなど、名作を観ながら170年間の美術史をたどることのできるギャラリーはそれほど大きくはないものの見ごたえがある。
レヴィ夫妻と親交があり、夫妻が多くの作品を蒐集したアンドレ・ドラン、トロワ出身のモーリス・マリノに関しては、新たにそれぞれの展示室が設けられた。ドランはフォーヴィスムを始めた画家として有名だが、それに至るまでの過程の作品が多数見られ、小さな彫刻76作を集めたスペースも新設。同館コレクションにはアフリカの彫刻、仮面なども多数あるが、これはレヴィ夫妻と仲のよかったドランが集めるようアドバイスしたといわれるし、モディリアーニとアフリカの仮面を並列させ、その影響を考察するなどの陳列もおもしろい。モーリス・マリノはガラス作家として有名だが、それ以前の絵画作品も同じ展示室にディスプレーされていたり、別途にマリノのデッサンを集めた小さなキャビネットも新設された。
さらなる見どころは、ロベール・ドロネーの 「走る人 Les coureurs」(下写真)。2019年、この作品の修復の際に、キャンバスの裏に謎の肖像画が描かれていることが発見された。ドロネーの専門家とこの美術館スタッフの調査、ルーヴル美術館内の科学的分析の結果、ドロネーが描いたシャガール夫人の肖像画であることが判明。シャガールも胸にカーネーションの花をつけた妻ベラを描いており、彼らと仲のよかったドロネーが1924、25年ごろ描いたものとされた。展示ではベラの肖像画も見られるが、ドロネーの意図(ベラの肖像よりも「走る人」を選んだ)を尊重し、裏面に鏡を置き、あくまでも裏面としての展示方法をとっているのだそう。
彫刻の作品収集にも力を入れている。美術館入口前の庭にはパーヴィン・キュリー(1936-)の大きな黒い彫刻「Château de l’âme(魂の城)」(2022)が置かれているが、入口のがっしりとした木の扉もキュリーによるものだ。セネガル人の彫刻家ウスマン・ソー(1935-2016)の彫刻は、フランスの美術館としてはいち早くコレクションに加え、今回の美術館リニューアルでは、展示室に入ると早々に観られるようになっている。
美術館の中庭は彫刻庭園だ。ジャン=ピエール・レノーの巨大な植木鉢(ポンピドゥ・センター前の広場に長い間置かれていたものは金色だったtが、こちらは赤)、前出キュリーが寄贈した作品、コミックスから抜け出てきたようなネコでおなじみの、アラン・セシャスの彫刻なども緑のなかで館賞できる。
Musée d’Art moderne de Troyes
Adresse : 14 place Saint-Pierre, 10000 Troyes , FranceTEL : 03 25 76 26 81
アクセス : 鉄道Troyes駅から徒歩10分ほど
URL : https://www.musees-troyes.com/art-moderne/
月休 火〜日 4月〜10月:10h-13h / 14h-18h (11月〜3月:10h-13h / 14h-17h)