6月29日、モンペリエに現代美術館「コレクション館」がオープンした。コレクターや財団の所蔵品などで特別展を行う美術館だ。第一回目は岡山の石川文化振興財団の所蔵品から44点を選んだ 「石川コレクション」展。コミッショナーは、ジャポニスム2018で「FUKAMI」展、メッスにあるポンピドゥ・センターでの「Japonorama」展を監修した実績のある、東京都現代美術館参事の長谷川祐子氏。実業家で財団理事長の石川康晴氏が収集するのはコンセプチュアル・アート。ピエール・ユイグが作った水槽の中では、ヤドカリが小さな仮面を家にして住んでいる。ボートピープルとして海を渡った経験があるダン・ヴォーは、紙袋に自由の女神を、透写紙にグリムの「シンデレラ」の文章を金で書き、天井から吊り下げた。移民が夢見る成功とその脆さを表したような作品だ。1階のバーでは、無人になると天井の照明が動き始め、ウィリアム・S・バロウズの 「Electronic Revolution 電子革命」の文章が、映画監督アベル・フェラーラの声で聞こえてくる。ロリス・グレオーの常設作品だ。
「パナセ」(万能薬の意)は2013年に開館。元は薬学校の建物だった。1階は展覧会場、上階は学生寮になっている。開催中の 「道 ― 世界ができるところ」展はビデオアート、ポスター、彫刻、デッサンで、道で起きる出来事を見せる。クルド人亡命アーティストのヒワ・Kが、イラクからローマまで逃げた道筋を歩いて再現したビデオが印象深い。
もう一つ見逃せないイベントが、100人のアーティストが町中の道や店、施設に展示する屋外アート展「ZAT 2019」だ。「コレクション館」隣の公園には、ジャンヌ・ダルクと、その奇行で名高い15世紀の貴族ジル・ド・レの彫像がある。ニルス・アリックス=タブランの作品で、ジルがジャンヌに恋していたらと想定して作ったという。地元出身のブリュノ・ぺナドは、パステルカラーに染めた旗を古い町並みに掲げた。どこに何があるのか、このイベントの地図を見ながら宝探しのように歩くのが楽しい。(羽)
MO.CO.とは?
「Montpellier Contemporainモンペリエ現代(美術)」の略。2014年、モンペリエのフィリップ・ソレル市長が、別の博物館になるはずだった1816年建設のモンカルム邸を現代美術センターにしようと考えた。これが「コレクション館Hôtel des collections」として2019年6月29日にオープン。この建物とモンペリエ国立美術学校、もう一つの現代アートセンターである「パナセ Panacée」を合わせたのがMO.CO.だ。美術教育、講演、作品展示をこの3館で行う。
【交通】パリからモンペリエまではTGVで約3時間半
◎MO.CO. Hôtel des collections
13 rue de la République 34000 Montpellier
駅から徒歩5分 月休 12h-22h
「石川コレクション」 展 9月29日まで
◎MO.CO. Panacée
14 rue de l’Ecole de la Pharmacie 34000 Montpellier
駅から徒歩13分 月火休 12h-20h
「La rue. Où le monde se crée 」展 8月18日まで
◎モンペリエ市内
街中の100人のアーティスト「100 artistes dans la ville – ZAT 2019」展
7月28日まで
詳細はこちら: www.moco.art