68年5月の脈動が、フェレの歌にこだましている。
Léo Ferré “Amour, anarchie”
1970年の秋から翌年の春にかけ、毎日のようにぼくらの安物の蓄音器にかかっていたのが、レオ・フェレの『Amour, anarchie』だった。
ヒット曲『パリ・カナイユ』やボードレールの詩を歌った『惡の華』などで知られていたフェレは、もともとアナキズムに近かったこともあり、68年5月の闘いに触発され、『Le Chien』を書く。「犬のように吠え立てる。ぼくは一匹の犬だ」。68年5月10日、パリのミュチュアリテ館での公演は若者たちでふくれ上がり、圧倒的な人気だったという。直後に『Amour, anarchie』がリリースされた。フェレの優しさあふれる熱唱、さまざまなイメージが重なり合う詩の素晴らしさ!『Petite』、『Poète vos papiers!』、『Rotterdam』と名曲づくめ。
71年6月、レ・アールにまだ残っていた中央市場跡バルタール館でのフェレのコンサートに出かけていった。Zooというロックバンドをバックに、白髪を振り乱しながら歌うフェレに大きな拍手が飛び、『Paris je ne t’aime plus』を聴きながら、ぼくは、まわりの若きフランス人たちと一つになっていく感動にとらわれていた。68年5月はまだ終わっていない。
「パリ、お前なんかもう好きじゃない/(けれど)3月22日のパリ、解き放たれたパリ/ナンテールのパリ、コーン=ベンディットのパリ/パリが知性とともに立ち上がる、パリ/ああ!すくっと立っている時のパリ/ぼくは、まだお前が好きだ」(真)