現在、パリでは世界の女性映画監督に焦点を当てた展覧会「女性たちが映画を占領する」が開催中だ。場所は4区の市庁舎(オテル・ド・ヴィル)。外出制限の段階的解除前である5月11日からスタートし、最終日は5月31日となっている。
映画ジャーナリスト、ヴェロニク・ル・ブリ著「女性監督による100の偉大な映画『キャベツ畑の妖精』から『ワンダーウーマン』まで。女性たちが映画を占領する時」(GRÜND刊)からヒントを得た企画で、文化チャンネルARTEとパリ市が共催している。
2017年秋、米映画製作者による性暴力の告発から端を発した#MeToo運動の勃発。その翌年には、カンヌ映画祭で男女格差是正を訴えた82人の女性映画人によるレッドカーペット上のパフォーマンス……。近年、映画界では女性の権利拡大や性差別撲滅を目指す動きが加速してきた。この流れに連帯する女性市長率いるパリ市は、世界の女性映画監督に焦点を当てた展覧会を支援する。
市庁舎のリヴォリ通り側の鉄柵に、世界初の女性映画監督アリス・ギイ、「ヌーヴェル・ヴァーグの祖母」と呼ばれた名匠アニエス・ヴァルダを筆頭に、古今東西の有名監督の写真パネルが並ぶ。それぞれ代表作とともに紹介され、例えば、アニエス・ヴァルダは『5時から7時までのクレオ』、セリーヌ・シアマは『燃ゆる女の肖像』、ナディーン・ラバキーは『存在のない子供たち』、河瀬直美は『あん』、ジェーン・カンピオンは『ピアノ・レッスン』、パスカル・フェランは『レディ・チャタレー』、ソフィア・コッポラは『ヴァージン・スーサイズ』、アニエスカ・ホランドは『ヨーロッパ・ヨーロッパ~僕を愛したふたつの国~』といった具合である。
『アトランティックス』でアフリカ(セネガル)系女性監督としてカンヌ初のグランプリ獲得者となったマティ・ディオップや、『心と体と』でベルリン映画祭金熊賞を受賞したハンガリー人イルディコー・エニェディなど、紹介するべき監督もまだまだいるが、展示スペースが限られているので仕方がない。ぜひ次回の開催に期待したい。
パネルには女性映画人たちの言葉も引用される。例えばアリス・ギイは、「世界と人生のヴィジョンを表現するため、女性たちは映画を占領するべきなのに」という言葉を残した。そして時は流れ、現在まさに、世界の女性映画人たちは自身のヴィジョンを表現し続けている。本展覧会のタイトルは、偉大な先人アリス・ギイへの返信のように響くだろう。
写真パネルが並ぶのはリヴォリ通り。通行人たちは足を止め、写真パネルを熱心に覗き込んでいる。実はちょうど丸60年前、アニエス・ヴァルダ監督の出世作『5時から7時までのクレオ』の撮影が始まったのもこの通り。ちょっとした運命も感じてしまうのだ。(瑞)
« Les femmes s’emparent du cinéma »
Grilles de l’Hôtel de Ville
2021年5月31日まで。鑑賞無料。
Hôtel de Ville de Paris (展示はリヴォリ通りの鉄柵)
Adresse : Place de l'Hôtel de Ville , Parisアクセス : M°Hotel de Ville / Rambuteau
URL : https://www.paris.fr/l-hotel-de-ville