サラ・フルカシエさん
この夏もまた、「ジャパンワークショップ」でフランスの若者が日本へと飛び立った。これは「日仏の架け橋となる若者育成を目指す訪日研修」で、国際交流基金の海外事務所であるパリ日本文化会館が協賛企業とともに開催しているプログラム。2014年に始まり、昨年までに68人を送り出している。今年も数多くの研究プロジェクトの応募があり、そのなかから選ばれた8人が7月の1週間を日本で過ごした(移動を含め全11日間)。
夏のバカンスを兼ねた研修、などと思ったら大間違い。彼らは東京に着いた翌朝から毎日1〜2社、日本を代表するトップ企業を訪問し、週末は「自由研究」として各自のテーマに沿った場所を見学する。他にも慶應大学や、この研修プログラムOBが日本で働いている会社を訪問して交流会。最終日は一週間の研究成果を関係者の前で発表、というハードな日程をこなすのだ。
今回、「パリと東京の都市農業比較」を研究テーマにワークショップに参加したサラ・フルカシエさん(22)は、パリ政治学院とソルボンヌ大学修士課程で「政治学と環境」を専攻する大学生。春までの予定でエコロジー省での研修もしている。トゥールーズ近郊出身で、幼いころから母親と庭で草花や野菜を育てるのが好きだったという。現在の食と農業のシステムが環境問題の原因になっていることに気づいてから、都市農場に興味を抱くようになった。
「地産地消という利点のほかにも、建物の屋上の畑は防寒・防暑にもなり、都心部の気温上昇を緩和します。化学肥料や殺虫剤を使わなければ生物多様性が守られる」と、都市農場の効用を説く。
パリ市が設置を推進しているビル屋上などの農場や、農場を運営するスタートアップ企業、市民団体などを訪問してから東京へ。森ビル屋上の水田や、お台場「都会の農園」、銀座の伊東屋の水耕栽培フロア、パソナグループの社屋ビル内の 「大手町牧場」などを見学し話を聞いた。道行く人たちに話しかけアンケートもした。「野菜や果物を栽培したことがあるか、都市農場に興味があるか、野菜はどこで買っているかなどの質問をしました…スーパーで買う、と答えた方が多かったです」。日仏を比較して 「パリではまず環境の観点から農場設置を考えるのに対して、東京では子どもの食育や、畑作業を通じての世代間のコミュニケーションを考えるという印象を受けました」。食料品売場では、輸入食料品が多いことも驚きだった。
この研修を経て、今後やりたいことは?「今年の11月、練馬区で都市農場に関する初めての国際会議が開かれます。パリは今のところ招待されていませんが、できればそれに参加して、今後日本とフランスがどのような形で協力できるのかを考えたい。あと慶應では、農業と日仏交流に関心を持つ人にも出会いました。今後プロジェクトを一緒にできたら嬉しいし、慶應に留学もしてみたい」。
ワークショップに参加した仲間たちとの交流はもちろん、四谷の宿舎の近くで出会った日本の学生と話が弾み、食事を共にするなど 「たくさんの出会いに恵まれた、本当に楽しい日々でした!」。
日本とフランスの交流の未来が、明るく見えてきた。(集)
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◎ 第6回ジャパンワークショップ成果発表会
Présentation “Le retour du Japon Workshop 2019”
「ジャパンワークショップ2019」に参加したサラさんを含む学生8人が研修の成果を発表します。どのようなプロジェクトを携え日本へ行ったのか、日本での経験が彼らの研究に与えた影響などを報告。入場無料。
10月5日(土)14h-16h
パリ日本文化会館レセプションホール (5階)
住所:101 bis quai Branly 15e M°Bir-Hakeim
要予約 https://mcj.shop.secutix.com/list/events/
公式サイト https://www.mcjp-japanworkshop.com/
パリ日本文化会館
Adresse : 101 bis quai Branly, 75015 Paris , Franceアクセス : M°Bir-Hakeim
URL : www.mcjp-japanworkshop.com