ルソーの静かな食卓 〈12〉

フランス18世紀は、性愛に対して自由だったとされている。ルソーとも一時期交友があった哲学者のディドロなどは、ポルノと呼ばれてもおかしくないような小説をものした。だが、プロテスタントの教えを受けて育ったルソーにとって、快楽はどこか罪深いもの。大流行したルソーの恋愛小説『新エロイーズ』(1761年)でも、耐え忍ぶ愛がテーマになっている。どこまでも生真面目な恋人たちを主人公とするルソーの作品は、読者に新鮮な驚きを与えたそうだ。

禁欲的なルソーの傾向は、食についての考えにも反映されている。たとえば、食に情熱を注ぐ「大人」をこきおろしているところ。いつまでも食べ物のことばかりを考えているような大人は「たくましさもしっかりしたところもない四十歳の子どもにすぎない」のだし、「食いしん坊はすぐれた資質をもたない人々のもつ欠点だ。食いしん坊の人の魂はその口のなかにあるにすぎない。かれは食うためにつくられているにすぎない」(今野一雄訳)と、なかなか手厳しい。

ただ、教育書でもあるこの本の中で、「食いしん坊は子どものころの情熱」とされている。子どもが菓子を欲しがることについては、ルソーも大いに理解を示していたのだ。そして、その情熱をうまく利用した教育方法なども披露している。また、ルソー自身はいわゆるグルメでも大食いでもなかったけれど、決して味覚をおろそかにするようなところはなかった。「わたしたちの体の一部となる物質を十分によく判断すること」には人一倍気を使っていたし、その自伝的小説『告白』(1770年)でも、自分には食べる「感覚」を楽しむところがあると明記している。(さ)


 

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