モンテーニュ通り30番地といえば、1946年にクリスチャン・ディオール(1905-57)がオートクチュールのメゾンを立ち上げた場所。1947年、この新生メゾンのサロンで発表された最初のコレクションは、戦時中のいかつい肩の上着、ストンとした膝丈のスカートなどから一転して、肩やバストの曲線に沿ったジャケット、ウエストは細く絞られ、花のようなふくらみを持つ丈の長いスカートという女性らしいシルエット。アメリカ人記者が「ニュールック」と表現したのが定着した。戦後、布も配給制が続くなか、たっぷりと生地を使ったデザインは物議を醸したが、なによりも女性に〈夢〉を与えた。
そんなモード史を刻んだ場所に3月9日、「ラ・ギャラリー・ディオール」が誕生した。ディオールの壮大な創造空間のなかに飛び込んで、その世界を堪能するかのようなミュージアム。ディスプレイが圧倒的に素晴らしく、ムッシュ・ディオールも天国で喜んでいるのではないかと思うほどだ。モードに興味がない人でも、演出によって文化財を魅力的に見せる方法など、楽しく見学できると思う。
ノルマンディー地方はグランヴィルの邸宅で育まれたディオール少年の美的感覚。その家の英仏海峡を見おろす庭で母親と草花の手入れをするのを好んだ少年は、大人になって花のような形、花のモチーフをあしらったドレスを多く創った。蛍の舞う夜の花園を再現した展示室ではムッシュ・ディオールのドレスと、そこから着想を得て創り出された後継デザイナーたちのドレス(イヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリアグラッツィア・キウリ)が並んで陳列される。
作業デスクが置かれたオフィスや、顧客を呼んでコレクションを発表するサロンの様子が再現してあったり、交流があったマン・レイやジャコメッティの作品が置かれた部屋もある。彼はパリ政治学院に通った後、画廊の支配人だった時期もあったのだ。エレガントなルネ・グリュオーの絵も多数見ることができる。
「頭から足までディオールで装わせたい」と言ったディオールのためにロジェ・ヴィヴィエが創った靴、ジョン・ガリアーノのためにステファン・ジョーンズがデザインした帽子などが並ぶ部屋も、またイタリアの古城のような〈舞踏会〉がテーマの部屋も絢爛だ。
2年間の大工事でブティックも新装オープン。レストラン、カフェ、庭も併設し、ミュージアムを合わせたディオールランド 「30 Montaigne」の総面積は1万㎡。宿泊サービスもあり、スイートルームの宿泊客には何時でもパーソナルショッパーが頼めるという特典つきだというが、こちらは縁がなさそうだ。(集)
◉La Galerie Dior : 11 rue François 1er 8e
Tél : 01 8220 2200 火休、11h-19h (入場17h30まで)。12€/8€。
予約制 : www.galeriedior.com/practical-information
M°Franklin Roosevelt
◉Café Dior(Le Galerie内) : 火休、11h30-18h30
コーヒー6€、グラスワインは20€から。
◉La boutique de La Galerie Dior:ディオール関連の本が揃う書店。ディオールのパズル、ジュイー布をモチーフにしたグッズ、文房具なども。
28 av. Montaigne 8e 月〜土10h-20h、日11h-19h
La Galerie Dior
Adresse : 11 rue François 1er, 75008 Paris , Franceアクセス : M°Franklin Roosevelt
URL : www.galeriedior.com/