Keith Jarrett “Budapest Concert”
キース・ジャレットの新しいアルバムが出た。といっても、ジャレットは2018年に2度の脳卒中を起こし、左半身が麻痺し演奏ができなくなっているので、2017年のソロアルバム、ハンガリー、ブダペストでのライブ録音だ。
1曲目は、左手がエネルギッシュに複雑な和音をたたいて右手の高音部とからみ合って加速していくあたり、もはやバルトーク。そういえばジャレットは新日本フィルと共演してバルトークのピアノ協奏曲第3番を録音しているが、クラシック畑のピアニストたちも顔負けの名演だったことが思い出される。2曲目、3曲目は、ビル・エヴァンスと現代音楽がとけ合ったような曲で、沈黙から浮き上がるジャレットの音が、きちんと芯がありながらも柔らかみがあって美しい。ドビュッシー風和音も顔を出す。4曲目は、ねばるようなフレーズをくり返しながらテンションを高めていくキース節…。という具合に、ジャレットの広い音楽性が行きついた頂点ともいえる傑作になっている。(真)
ECM/2枚組22€前後