今年のフランス、こんなことばが飛び交いました。
印象に残った11の言葉で、2022年をふり返ってみました。
superprofit
元はといえば「超過利潤」というマルクス用語。外的要因によりタナボタ式に得られた利益を指す。ウクライナ戦争の影響による世界的エネルギー価格高騰によって莫大な利益を上げたエネルギー企業に特別課税すべきという意見が夏頃から高まった。仏国内でやり玉に挙がったのはトタル社で22年上半期、前年同期の3倍近い183億€の純益を計上。左派連合Nupesは2017-19年の平均より25%以上利益の伸びた大企業に25年まで20~33%追加課税するという案を国民投票にかけようと提出したが憲法評議会に却下された。政府はEUの推奨に従い、石油・ガス企業で過去4年の平均より利益が20%以上増えた企業に23年度33%の特別課税を設けた。
réquisition
日本でも戦争中は物資を強制的に集めたり、国民を軍需工場へ動員したりといった「 徴用réquisition」は馴染みのある言葉だったが、現代ではあまり聞かない。10月上旬、製油所のストで燃料不足になり、給油所に長蛇の車の列ができた事態を受けて、ボルヌ首相は10月11日にエッソの製油貯蔵所の従業員数人の徴用を決め、燃料不足は解消に向かった。徴用といえば、4月、服従しないフランス党(LFI)のメランション氏が仏国内の穀物類の徴用と価格統制をすべきと主張。ウクライナ戦争を受けて穀物価格が高騰し、中東やアフリカなどで小麦などが不足したためだが、徴用は実現しなかった。22年は燃料、油、小麦などの「欠乏 pénurie」という言葉もよく聞かれた年だった。
TPMP
討論番組「Touche pas à mon poste」。社会問題、政治などを様々な立場のゲストが討論する番組だが、極右政治家のレギュラー出演、大統領選前にゼムール候補を長時間にわたって取り上げ、世論を右傾化させたことなどを国立科学研究所の研究者が指摘。
暴言も多く、この秋には、若い国会議員が出演し同番組を放送する「C8」局(Canal+グループ)所有者で実業家(流通、通信)のヴァンサン・ボロレの事業を批判すると、司会のシリル・アヌナが「ボロレグループの番組に来て何言ってんだ?クソ野郎、バカ」などと罵倒。Arcom(視聴覚とデジタル通信規制機関) が調査を開始した。議員侮辱のほかにも、フランスの9割のメディアが9人の富豪に所有されることによる、言論統制の問題も再浮上。
transfuge
戦争時に寝返ったり、政治で鞍替えする意のtransfugeは、低い社会階層から上層階層へと移ることにも使われる。労働者階級出身のアニー・エルノーがノーベル文学賞を受賞し、この言葉が頻用された。エルノーと親しいエドゥアール・ルイ、ゴンクール作家ニコラ・マチューなども例に挙げられる。
以下もあわせてお読みください。
ことばでふりかえる2022年のフランス《1》
ことばでふりかえる2022年のフランス《2》