秋といえばキノコ。オレンジ色がかった小さなジロール茸は、9月に入ると、そのオレンジ色もあざやかになり、うまさが増す。料理にかかる前に、石づきをとり、刷毛を水をちょっとつけながら、キノコの表面についている枯れ葉などをサッサッと掃除する。その繊細な香りを生かすには、火のとおしすぎは禁物。熱湯をかけてしんなりさせてサラダに入れたり、さっとバターでいためてからオムレツやリゾットに入れる。10月になると、キノコファン待望のセープ茸が登場。大きく、傘の裏のスポンジ状のところが発達しているものよりは小さめを選びたい。キロ40ユーロ以上するけれど、年に一度くらいは、気ばって800グラムぐらい買い、バターいためしてからエシャロットとニンニクを混ぜ入れるボルドー風で、セープ茸のうまさを満喫。
フランスのキャベツには、日本のキャベツそっくりの白玉のchou blancと外側の葉がちぢんでいる緑玉のchou vertがある。白玉はもっぱらシュークルート用。9月になると、新キャベツを塩漬けにしたシュークルートがパリに到着し、東駅前のアルザス食材の老舗Schmidに「La choucroute nouvelle est arrivée!」の張り紙が出る。 緑玉は豚肉の脂でおいしくなる。ポテという豚の塩蔵肉入りの煮込みには欠かせない。このキャベツのファルシ―はオーヴェルニュ地方の名物料理。
10月末くらいから八百屋に西洋カボチャpotironが並ぶ。最近は、皮がオレンジ色で、クリやハシバミを思わせる味わいのpotimarronに人気がある。スープやグラタンにすると絶品。ハロウィーン前に並ぶ大カボチャは装飾用で食べられません。
冬は根菜たちが大活躍。ニンジン、ジャガイモ、サツマイモだけでなく、ビーツbetteraveやパースニップpanais、根セロリcéleri-rave……。ニンジンやジャガイモのレシピを応用して調理すればいいのだが、このうちのいくつかを組み合わせ、オーブンでホイル焼きというのが、わが家では好評だ。
そして長ネギpoireau。晩秋から冬にかけてどんどん太くなり(1本500グラム以上になったりする)、甘さも増して食べごろになる。 その安さとうまさで「貧乏人のアスパラガスasperge de pauvre」という異名をもつくらいだ。タルトにしたり、ジャガイモといっしょにスープにしたり、くたくたにゆでてからヴィネグレットソースで和えた一品はビストロの定番。ポトフでは、牛肉といっしょに煮込まれて、口の中でとろけるようなうまさになる。(真)
Trompette de la mort
10月末くらいから、ときどき八百屋で売られているのが、死のトランペット茸というぶっそうな名前のキノコ。小さくて黒いし、枯れ葉の下に生えていたりするので、見つけるのはなかなか大変らしい。セープ茸の半値以下というのがうれしいし、見かけによらずなかなかうまい。ウサギ肉の煮込みに加えるレシピを紹介したことがある。さっとバターいためし、みじんに切ったパセリとニンニクを加え、もう少々火をとおし、パスタと混ぜ合わせるのもおすすめだ。
Topinambourg
わが家の庭の片隅に黄色い花をつけるキクイモtopinambourg。花がしおれるころにひっこ抜くと、塊根が何個もついている。これが食用になる。一時忘れ去られていた根菜だが、どこの八百屋にも並ぶようになった。大戦中の非常食から、少しきどったレストランのメニューにも登場する出世ぶり。金タワシでこすって土や汚れをとって水洗いすれば、別に皮をむく必要もない。揚げたり、ゆでてからマッシュにしたり、スープやグラタンに入れたりと、ジャガイモ同様に調理。血糖値を下げる食品としても注目されている。
Céleri-rave
根セロリは、秋から冬にかけておいしい根菜の一つ。大きいものは1キロを超えるが、小さめの方が中央にすが入っていなくておいしい。八つに切り分けてから、皮を3ミリほどの厚さにむくのだが、頑丈な包丁が必要だ。皮をむいたら、さっと水洗いし、色が変わらないようにレモン水を通す。おいしいのはマッシュやグラタン。小さく切り分けてからゆで、マッシャーやフォークでつぶし、バターをたっぷり混ぜ入れ、塩、コショウで味を調えるだけ。少々水っぽいので、根セロリの1/3の量ほどのジャガイモを加えるといい。ビストロの典型的なアントレ、セルリ・レムラードcéleri rémouladeは、レモン水を通した根セロリをおろし、マスタードなどで辛味をつけたマヨネーズで和えたものだ。