イギリスやアイルランドのフィッシャンチップス(地元の人はこんなふうに発音)の店で、好きな魚を選んで揚げてもらうたのしさは忘れられない!カリッと揚がった衣の中から、熱々でやわらかな白身の魚が顔を出す。こんな喜びを家庭でも再現したい。
魚屋にcabillaud (真ダラ)、 lieu jaune(ポラック)、aiglefin (ハドック)といったタラ科の魚のおろし身が並んでいる。好みの魚を一人分150グラムの見当で買ってくる。腹骨が残っていたら、その部分を鋭利な包丁で細く切り出す。あまり大きいと揚げにくいので、なるべく均等な大きさに、二つあるいは三つに切り分ける。
大きなボウルに卵をとって丁寧に割りほぐし、ビールを注いで混ぜ合わせ、塩適量を加え、泡立て器を使って小麦粉を混ぜ入れていく。衣の固さは、魚を入れてとり出したときに、流れ落ちるのではなく、かといってボテッとくっついてしまうのではなく、おろし身全体を薄くもなく厚くもなくおおうという感じをめざしたい。
フリット(フライドポテト) だけれど、鍋を二つ使って魚といっしょに揚げて熱々を、というのは家庭ではむずかしい。そこでオーブンで焼くことにする。ジャガイモの皮をむいてから(新ジャガなら皮つきのまま)、フリットよりはやや大きめに切り分け、油大さじ2杯と混ぜ合わせてから、大きめのバットに並べる。180度で熱くなっているオーブンに入れ、ときどき混ぜ合わせながら、全体にきれいな焼き色がつくようにしたい。
おろし身の水気が衣がはがれるもとなので、キッチンペーパーで水気をしっかりとぬぐい、塩、コショウしてから小麦粉をはたいておく。揚げる直前にベーキングパウダーを衣に混ぜ入れる。いつもの揚げもの用の鍋に、油をたっぷりとり、高めの温度で、おろし身を次から次へと揚げ、油をきり、熱くしておいた皿(コラム参照)に即座に盛りつける。
ポテトとレモンを脇に置き、定番のケチャップとマスタードも忘れないように添える。今回はグリーンピースのバター煮も付け合わせにした。飲みものは、ビールかムスカデなどの辛口の白ワイン。(真)
【材料】
4人分 : 魚のおろし身500-600g、ビンチュbintje種などフリット用のジャガイモ800g、油 (落花生油 huile d’arachide) 適量、小麦粉少々、レモン、塩、コショウ
衣 (粉の多少は揚げる前に調整してください) : 卵1個、ビール200cc、小麦粉140g、ベーキングパウダーlevure chimique2袋、塩適量
Friture
天ぷら鍋や中華鍋あるいはフライヤーfriteuseがなかったら、なるべく厚手の鍋を用意し、少なくとも3、4センチくらいの深さに油を入れたい。あんまり浅いと、入れた具が沈んで底にくっついてしまう。油はこしが強い落花生油huile d’arachideがおすすめだ。数回使えるので、揚げかすが入らないようにこしてから、適当なびんに移して暗所で保存することにしよう。今回のレシピのような魚のおろし身の揚げものは、網じゃくしを使ってひっくり返すとうまくいく。油をきるときは、すのこ付きのバットが便利。
Chauffer les assiettes
魚料理はとくに冷めやすいので、盛りつける皿をレストランのように熱くしておくと、料理がいっそうおいしくなる。電子レンジがあったら、一回に皿4枚ずつ、皿と皿の間にぬらしたキッチンペーパーをおき、一番強い目盛りにして、1分ほど入れればいい。電子レンジがなかったら、流しに皿を入れ、それがすっかりかぶるように熱湯を注いでしばらく待つ。いずれも、皿がすごく熱くなるので、やけどしないように布巾を使ってとり出す。
Aiglefin
魚屋に丸ごとあるいはおろし身の形で並んでいるaiglefinは、北海産のスケソウダラに近いタラ科の魚だ。この魚をオレンジ色にくん製したものはアドックhaddockと呼ばれる。繊細な風味の白身は、揚げたり、ムニエルにしたり、 包み焼きにしたり、魚のパイに入れたりして味わいたい。フィッシャンチップスでは、真ダラ(cabillaud)やカレイ(carrelet)と並んで人気もの。アドックは、牛乳でゆでてから皮と骨をとってほぐし、ケジャリーという英国風ドライカレーに加えるのが定番だ (587号参照)。