Van Gogh à Auvers-sur-Oise
オーヴェル=シュル=オワーズのゴッホ
優れた展覧会が多い今秋、白眉はこの展覧会だろう。サンレミ=ド=プロヴァンスの病院を退院した後、1890年5月20日から7月29日にピストル自殺するまでの約2ヵ月間、ゴッホはパリから電車で約1時間のオーヴェル=シュル=オワーズに滞在した。
この町を選んだのは、メランコリー(うつ病の症状のひとつ)の治療で評判の高いポール・ガシェ医師が開業していたからだった。滞在中に描いた油彩は74枚、デッサンは50枚以上。その中から油彩約40点とデッサン20点を選び、アマチュア画家だったガシェ医師の作品や、ガシェのもとでゴッホが初めて制作した版画も加えて構成した展覧会である。
オーヴェル時代にフォーカスした展覧会はこれが初めてだという。アムステルダムのゴッホ美術館で開催後、オルセーに巡回中。短い期間に描かれた絵を丹念に見ていくと、ゴッホの頭の中に入り込んで、創作を追体験したような気持ちになる。ジャンル別に見ると、妙な共通点があることに気づく。ゴッホは「肖像画に一番情熱を傾けている」と手紙に書いていた。モデル不足もあって、実際に描いた肖像画は少ないが、背景の色が人物の服の色と同じだったり、背景の色が服と顔にも塗られていたり、背景と服が同系色であるなど、背景と人物の関係が独特だ。
描き方にも統一性がある。風景画は、ほとんどが0.5cm〜1cm幅の平筆で描かれており、ひとつのことをずっと追求する性格が感じられる。ゴッホは最後の1ヵ月間に、縦50cm × 横h1mという、ゴッホにしては珍しい、規格外の大サイズの絵を13枚描いた。そのうちの11枚が展示されている。小林秀雄がその複製画を見て衝撃を受け、ゴッホについて書くきっかけとなった「カラスのいる麦畑」もその1枚だ。(羽)
Musée d’Orsay
Adresse : Esplanade Valéry Giscard d’Estaing , 75007 Paris , Franceアクセス : Solférino
URL : https://www.musee-orsay.fr/fr
月休、火〜日9 h30-18h( 木-21h45 :18h以降の入館12€)。 12/25休館。入場料:16€ / 13€(18歳未満の子ども同伴者料金) / EU圏内在住の26歳未満無料。 毎月第一日曜日無料。