Marc Desgrandchamps – Les paysages demandent aussi un temps de pose
マルク・デグランシャン(1960-)は、重要な現代具象画家のひとりで、2006年にポンピドーセンターで、2011年のパリ市近代美術館で大回顧展を開いた。また、ひとりの画家が1ヵ国または1都市の風景を描くルイ・ヴイトンの「トラベルブック」シリーズで、バルセロナ巻を担当したことでも知られている。このシリーズで描いたのはわかりやすい風景画だったが、本来は風景に人物や植物、動物などが重なる、独特のスタイルを貫く画家だ。
印象派150年記念の第2弾として、イヴトーの「ギャルリー・デュシャン」が、デグランシャンの2022−24年の作品30点を展示している。昨年、デグランシャンがここでアーティスト・レジデンス中に制作した作品が半分を占めている。それまでノルマンディーはあまり知らなかったが滞在中に海辺や森、ルーアンなどを回ったという。
海や丘のある風景の中に彫刻が立っているが、下から風景画が透けるような薄塗りで、どこまでが風景なのか、わからない。彫刻の一部が山や岩と同じ色をしているのだ。人物が描かれている場合も同様で、人物が風景の中に溶けている。風景のなかに人体や馬の体の一部が描かれていることもある。動きはなく、全てが静止している。平面を多層的に重ね、重ねた一部から別の形が現れる。めくってもめくっても、現れるのは薄くはかない幻でしかないような絵だ。
前述の彫刻は、ルーアンのサン・マクルー回廊(14世紀のペストの死者の納骨堂跡)で見た小彫刻からインスピレーションを得たという。断崖の風景もあり、やはりノルマンディーがベースになっているのがわかる。
一見写実的に見える、夜の風景がある。公園かレストランのテラスに座った後ろ向きの女性が、離れたテーブルにいる男性の方を見ている。その隣の作品では、すでに男性の姿はなく、女性は相変わらず後ろ向きだが、男性のいた方を見ておらず、女性の横にはメガネをかけた男性が座っている。同じ場面をずらして、少しの時間の経過を2つのショットを描いた、映画的な作品だ。しかし、ここでも現実味はなく、水辺のような遠景は半抽象的に描かれている。
ギャラリーでは毎回、レジデンスのアーティストの作品を小冊子にして来場者に贈呈している。デグランシャンの冊子は、自作の絵を写真に取り、コラージュにした小さな作品群で構成されている。風景と人物が縦に混じり合い、油彩で表現した画面が、コラージュでより多層的になっている。実物は会場のガラスケースの中で見られる。(9月22日まで)
Galerie Duchamp
Adresse : 5-9 rue Percée , 76190 Yvetot , FranceTEL : 02 35 96 36 90
アクセス : Paris Saint Lazare駅からYvetot駅まで直行で2時間。駅から徒歩10分。
URL : https://galerie-duchamp.org/
月火水は休館。水10h-12h/14h-18h、木-日 14h-18h。