「Sculpter le monde 世界を彫刻する」
日本人の父、アメリカ人の母を持つイサム・ノグチ(1904-88)は、ふたつの祖国で有名だが、フランスでは意外にそれほど知られていない。この回顧展は、その奇妙な不均衡を埋め合わせる絶好の機会となるだろう。
日本で幼少期を、青年期をアメリカで過ごしたノグチは、生涯旅人のような人生を歩んだ。欧州やアジア、南米や中東と、あらゆる国や地域の文化を吸収し、現地の芸術家から刺激を受け幅広いジャンルの作品を残している。彫刻家、インテリア・デザイナー、舞台美術家、陶芸家、環境設計家。いくつもの顔を持つユニークな芸術家の足跡を、時代とともに立体的にたどれる展覧会だ。
「私にとって実験芸術の全ての物語はパリで始まった」。そう本人が語るように、23歳で渡仏し彫刻家ブランクーシに師事。石や木など素材への愛を育んだ。1935年からはモダンダンスの大家マーサ・グレアムとのコラボレーションを開始。薄暗い展示会場には舞台装置が並び、中央に資料写真が浮かび上がる。グレアムとの仕事は30年に及ぶが、間違いなく彼の最も美しい仕事のひとつだろう。
世界中で知られる和紙照明 「AKARI」の展示室では、約80の大小様々の灯りが温かい光を放つ。岐阜の伝統工芸の提灯を基に1952年に商品化され、インテリア・デザインの世界に革命を起こした。今やイケアもコピーしていることを思えば、後世への影響は計り知れない。環境設計の展示室ではパリ・ユネスコ本部の「平和の庭」の写真も。晩年には公園やモニュメントなど、社会とのつながりを大事にする公共芸術の仕事を手がけ、最後まで型にはまらぬダイナミックな総合芸術家であり続けた。
すでにロンドン、ケルン、ベルンと巡回した後、リール(北フランス)郊外にやって来た作品群。フランスの美術館に所蔵品が少ないノグチ作品を、まとめて鑑賞できる貴重な展示でもある。7/2まで。(瑞)
【交通】パリ北駅からリール駅まで列車で約1時間10分。リールからa1番線に乗りPont de Bois 駅下車し、L6番バスで L.A.M停留所。
www.musee-lam.fr/fr/horaires-acces
★リールに行くなら、現在開催中の展覧会、Lille 3000 : 『部屋を片付けなさい!Range ta chambre!』展もどうぞ。
LaM (Lille Métropole Musée d’art moderne, d'art contemporain et d'art brut)
Adresse : 1 allée du Musée , 59650 Villeneuve d'AscqURL : https://www.musee-lam.fr
月休、 火~日:10h-18h 11€/割引 8€