パレスチナ情勢が緊迫するなか、パレスチナ自治区のユダヤ人入植地に関連する事業を行う仏企業の社会的責任や提訴される可能性を、ル・モンド紙8月9日付電子版が論じた。
7月19日、国際司法裁判所(ICJ)がパレスチナ領ヨルダン川西岸地区などでイスラエルがとる占領政策は国際法違反であり、占領をできるだけ早く終結させるべきという勧告的意見を出した。同地区は1993年のオスロ合意でパレスチナ自治区とされたにもかかわらず、1967年の第3次中東戦争以降、多くの部分がイスラエルに実効支配され、ユダヤ人の入植が増え続けている。国際社会は長年黙認していた形だが、イスラエルのガザ攻撃に批判が高まるなか、ICJは、入植地拡大などの占領政策は事実上の併合であり、パレスチナ人の移動や居住の制限は人種や宗教に基づく差別で、国際法違反と断じた。
国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR)は2020年2月に、ユダヤ人入植地で事業を行いパレスチナ人の人権侵害に加担している恐れのある112社の企業名を公表した(2023年更新版で97社)。ほとんどはイスラエル企業だが欧米企業もあり、仏企業では通信SFRの親会社アルティス、鉄道アルストム、エンジニアリングのエジスの3社が含まれる。ル・モンド紙によると、仏の2017年のデューデリジェンス関連法やEU指令により人権侵害や環境破壊を行わない義務が企業に課されており、そのため仏企業が司法に訴えられる可能性があると専門家は指摘する。
同紙によると、アルティス社は、イスラエルで通信事業を展開する子会社は宗教も民族も関係なくサービスを提供していると言明。アルストムはエルサレムと入植地を結ぶ地下鉄のメンテを過去に請け負ったのみ、エジスもエルサレムと入植地間のトラムウェイ建設に関してコンサル業務をしたにすぎないと弁明した。入植地に9つの店舗があるイスラエル企業とフランチャイズ契約を結んだ小売カルフールは、イスラエルに対するボイコット、投資撤退、制裁の英語の頭文字をとって「BDS」と呼ばれる市民運動から定期的に非難されている。BNPパリバ銀行もイスラエルの軍事企業エルビット社に2018~21年に7600万€の融資をしたと市民団体から批判されている。
このように企業、特に大企業はその事業に関連する人権侵害や環境破壊について市民社会からより厳しく監視されつつある。企業は社会的責任の側面を今後はより真摯に検討せざるを得ないだろう。(し)