
フランスの出世株エマニュエル・マールの長編2作目、単独の監督作としては初の長編に。先のカンヌ映画祭で早くもコンペ入りし、映画界での彼への期待の高さが伺えた。監督の実の曾祖父母が残した手紙から着想された物語だ。
第二次世界大戦下。技師のアンリはペタン政権が樹立されたヴィシーに、野心を抱き乗り込んだ。労働と経営の効率化を説く著作「我らの救済」を有力者らにアピールしながら、行政機関の中枢に潜り込もうと画策する。
冒頭から独特の雰囲気に引き込まれる。役人らのパーティで、会話の輪に入ろうとする主人公。セピア色の空間の中、カメラは不安定な動きで、彼の一挙一動を盗み見る。即興も取り入れた会話が生々しい。歴史劇だが、今この瞬間にドラマが立ち上がるような作品のトーンが定まる。

カンヌでは先の大戦時が舞台の作品が集まった。観客動員数550万人超のヒット作となったド・ゴール将軍についての2部作『La Bataille de Gaulle』や、レジスタンスの英雄ジャン・ムーランについての伝記映画『Moulin』である。それらは「抵抗するフランス」というフランス人が誇りに思う側面を強調する。一方、本作はタブーでもある対独協力者(コラボ)の視点が描かれ、より挑戦的。名優スワン・アルロー(『落下の解剖学』、『Sukkwan Island』、『新凱旋門物語』)は曖昧な存在感で、個人が平凡な悪の歯車に取り込まれるシステムを体現した。
前作『Rien à foutre』は格安航空会社添乗員の日々を描く現代劇。今回、舞台を過去に移すも、労働と合理化の関係性への監督の興味は一貫している。クラシカルな雰囲気で敷居が高そうだが、現代的な課題まで透けて見えてくるような作品。カンヌで脚本賞も受賞し、本年度仏映画の大きな収穫となった。(瑞)
