Bertrand Chamayou “Letter(S) to Erik Satie”
ラヴェル、シューベルト、フランクと立て続けに素晴らしいアルバムを出しているピアニスト、ベルトラン・シャマユー(45)が、こんなことを言っている。「エリック・サティ―とジョン・ケージは、音楽についての考えを一新したという意味でパイオニアだ」。その現代音楽の作曲家ケージ自身も、サティーの曲に霊感を受けたと言ってやまなかった。シャマユーのアルバム『サティーへの手紙 Letter(S) to Erik Satie』では、サティーとケージの音楽が対話している。
最初の曲はケージの『All sides of the small stone』で、サティーファンでなくても一度は聴いたことのある『ジムノペディ第1番』の音型が顔を出し、和声でおおったりせずに、沈黙の間を軽妙にピアノが歌っていく。2曲目は、サティーの『グノシエンヌ第1番』。二人の作曲家の寡黙な音楽が鏡に反映しているような印象を受ける。3曲目はケージの『Prelude for Meditation』は、ぽつぽつと石庭を打つ雨のしずくか。ケージの曲では『In a Landscape』がシャマユーの繊細な演奏のおかげで息をのむような美しさ。
一度聴きはじめたら、サティーとケージの音楽が一つにとけ合うように流れていき、いつのまにか最後まで耳を傾けてしまう傑作アルバムだ。録音もシャマユーの柔和でいながら芯のあるタッチをみごとにとらえている。現代音楽なんて、と言っている友人への、素敵なノエルのプレゼントになるだろう。(真)