ルソーの静かな食卓 〈15〉 2020-05-10 ルソーの静かな食卓 0 根っからの頑固さや被害妄想のせいで多くの友人たちと仲違いしたルソーが、亡くなる2年ほど前に書き始めたのが『孤独な散歩者の夢想』(1782年)。「こうしてわたしは地上でたったひとりになってしまった」(今野一雄訳)と書き出したルソーのかたわらには、しかし、妻のテレーズがいた。ある時 [...]
ルソーの静かな食卓 〈14〉 2020-04-09 ルソーの静かな食卓 0 18世紀の哲学者ルソーの人生を振り返ると、その複雑怪奇な性格や、行動の矛盾に気づかざるを得ない。その中でも特に驚かされるのが、後に多くの貴族も手本としたといわれる教育書『エミール』(1762年)を書いておきながら、自らの子どもを実に5人とも孤児院に入れたという事実。 もっとも、 [...]
ルソーの静かな食卓 〈13〉 2020-03-11 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 何においても「節制」を美徳とする哲学者ルソーだけれど、何も、日常の小さな悦びを否定しているわけではない。ごく若い時から、甘いものとワインは暮らしの中のささやかな慰めだった。『告白』(1770年)に、こんなくだりがある。「いったん大事な菓子パンを手に入れ、部屋にとじこもり、戸棚の奥 [...]
ルソーの静かな食卓 〈12〉 2020-02-06 ルソーの静かな食卓 0連載コラム フランス18世紀は、性愛に対して自由だったとされている。ルソーとも一時期交友があった哲学者のディドロなどは、ポルノと呼ばれてもおかしくないような小説をものした。だが、プロテスタントの教えを受けて育ったルソーにとって、快楽はどこか罪深いもの。大流行したルソーの恋愛小説『新エロイーズ [...]
ルソーの静かな食卓〈11〉 2019-12-09 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 18世紀に書かれた一種の教育書『エミール』(1762年)において、触覚、聴覚、視覚といった感覚の中で、わたしたちにもっとも重要なのは味覚だとされている。著者である哲学者ルソーにとっての好ましい味覚とは、自然に近いもの。「結局、わたしたちの味覚は単純であればあるほどいっそう普遍的」 [...]
ルソーの静かな食卓 〈10〉 2019-11-07 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 18世紀の哲学者ルソーは、独特の教育書『エミール』(1762年)で、子どもを「肉食動物」にしないことが大切だと説いている。興味深いのは、それが栄養学とは違う視点で論じられていること。 「それはかれらの健康のためにではないにしても、かれらの性格のためにだ。経験をどんなふうに説明して [...]
ルソーの静かな食卓 〈9〉 2019-10-09 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 18世紀フランスの上流社会では、乳母に授乳や子育てを任せきりの母親がほとんどだった。そして、労働に追われる乳母たちは、子守りの手間をはぶくために幼子をしっかりと産着でつつんでしまった。 哲学者ルソーは、そんな習わしにメスを入れる。母親は自ら子どもに母乳を与えるべきだし、乳児の体の [...]
ルソーの静かな食卓 〈8〉 2019-09-12 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 哲学者ルソーの代表作とされる『エミール』(1762年)は、他に類をみない不思議な書物だ。それはエミールという男児が成人するまでの過程をなぞる物語ではあるけれど、小説というカテゴリーを明らかにはみ出ている。作者独自の哲学や宗教観、また、社会や教育についての意見がたっぷりと盛り込まれ [...]
ルソーの静かな食卓 〈7〉 2019-08-18 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 楽園のようだったサヴォワの田舎での暮らしは、ルソー最愛のヴァラン夫人が新しい恋人を見つけたこともあって終わりを告げる。その後のルソーは、パリでディドロをはじめとする文学者と交流するようになったり、論文が認められたりと、30代後半には社交界でも知られる存在になっていった。ところが、 [...]
ルソーの静かな食卓 〈6〉 2019-07-11 ルソーの静かな食卓 0連載コラム 母親を知らずに育ったルソーだったけれど、その人生は多様な女性たちにいろどられている。何人か挙げられる重要な女性の中でも、孤児同然だったルソーの人生をすっかり変えてしまったのがヴァラン夫人だった。 出会ってから程なく「ママン」「坊や」と呼びあうようになったふたりの関係は約10年間 [...]