ルソーの静かな食卓

「静」の文字がよく似合う、ジャン=ジャック・ルソーの食風景のお話。

ルソーの静かな食卓 〈13〉

何においても「節制」を美徳とする哲学者ルソーだけれど、何も、日常の小さな悦びを否定しているわけではない。ごく若い時から、甘いものとワインは暮らしの中のささやかな慰めだった。『告白』(1770年)に、こんなくだりがある。「いったん大事な菓子パンを手に入れ、部屋にとじこもり、戸棚の奥 [...]

ルソーの静かな食卓 〈12〉

フランス18世紀は、性愛に対して自由だったとされている。ルソーとも一時期交友があった哲学者のディドロなどは、ポルノと呼ばれてもおかしくないような小説をものした。だが、プロテスタントの教えを受けて育ったルソーにとって、快楽はどこか罪深いもの。大流行したルソーの恋愛小説『新エロイーズ [...]

ルソーの静かな食卓〈11〉

18世紀に書かれた一種の教育書『エミール』(1762年)において、触覚、聴覚、視覚といった感覚の中で、わたしたちにもっとも重要なのは味覚だとされている。著者である哲学者ルソーにとっての好ましい味覚とは、自然に近いもの。「結局、わたしたちの味覚は単純であればあるほどいっそう普遍的」 [...]

ルソーの静かな食卓 〈10〉

18世紀の哲学者ルソーは、独特の教育書『エミール』(1762年)で、子どもを「肉食動物」にしないことが大切だと説いている。興味深いのは、それが栄養学とは違う視点で論じられていること。 「それはかれらの健康のためにではないにしても、かれらの性格のためにだ。経験をどんなふうに説明して [...]

ルソーの静かな食卓 〈9〉

18世紀フランスの上流社会では、乳母に授乳や子育てを任せきりの母親がほとんどだった。そして、労働に追われる乳母たちは、子守りの手間をはぶくために幼子をしっかりと産着でつつんでしまった。 哲学者ルソーは、そんな習わしにメスを入れる。母親は自ら子どもに母乳を与えるべきだし、乳児の体の [...]

ルソーの静かな食卓 〈8〉

哲学者ルソーの代表作とされる『エミール』(1762年)は、他に類をみない不思議な書物だ。それはエミールという男児が成人するまでの過程をなぞる物語ではあるけれど、小説というカテゴリーを明らかにはみ出ている。作者独自の哲学や宗教観、また、社会や教育についての意見がたっぷりと盛り込まれ [...]

ルソーの静かな食卓 〈7〉

楽園のようだったサヴォワの田舎での暮らしは、ルソー最愛のヴァラン夫人が新しい恋人を見つけたこともあって終わりを告げる。その後のルソーは、パリでディドロをはじめとする文学者と交流するようになったり、論文が認められたりと、30代後半には社交界でも知られる存在になっていった。ところが、 [...]

ルソーの静かな食卓 〈6〉

 母親を知らずに育ったルソーだったけれど、その人生は多様な女性たちにいろどられている。何人か挙げられる重要な女性の中でも、孤児同然だったルソーの人生をすっかり変えてしまったのがヴァラン夫人だった。 出会ってから程なく「ママン」「坊や」と呼びあうようになったふたりの関係は約10年間 [...]

ルソーの静かな食卓 〈5〉

カトリック教徒になったルソーは、1730年の夏、散策に出かけたサヴォワの村ラ・ヴァレ・ド・トーヌで、知り合いの女性ふたりと忘れられない一日を過ごした。自叙伝『告白』(1770年)に、その甘酸っぱいような日のことが長々と綴られている。 「わたしたちは農家の台所で食事をした。(中略) [...]

ルソーの静かな食卓 〈4〉

 経済的な理由からカトリックへの改宗を決めたルソーが牧師から紹介されたのが、6歳年上のヴァラン夫人だった。世話係としてルソーの目の前に現れた、美しい目をした優美な女性。まるで女神のような彼女に言われるまま、1728年春、16歳に満たないルソーはサヴォワの首都トリノに向かった。そし [...]
 

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