連載コラム「ルソーの静かな食卓」

「静」の文字がよく似合う、ジャン=ジャック・ルソーの食風景のお話。

ルソーの静かな食卓 〈6〉

 母親を知らずに育ったルソーだったけれど、その人生は多様な女性たちにいろどられている。何人か挙げられる重要な女性の中でも、孤児同然だったルソーの人生をすっかり変えてしまったのがヴァラン夫人だった。 出会ってから程なく「ママン」「坊や」と呼びあうようになったふたりの関係は約10年間続き、その間に、少年だったルソーは...

ルソーの静かな食卓 〈5〉

カトリック教徒になったルソーは、1730年の夏、散策に出かけたサヴォワの村ラ・ヴァレ・ド・トーヌで、知り合いの女性ふたりと忘れられない一日を過ごした。自叙伝『告白』(1770年)に、その甘酸っぱいような日のことが長々と綴られている。 「わたしたちは農家の台所で食事をした。(中略)なんという食事!なんという...

ルソーの静かな食卓 〈4〉

 経済的な理由からカトリックへの改宗を決めたルソーが牧師から紹介されたのが、6歳年上のヴァラン夫人だった。世話係としてルソーの目の前に現れた、美しい目をした優美な女性。まるで女神のような彼女に言われるまま、1728年春、16歳に満たないルソーはサヴォワの首都トリノに向かった。そして、洗礼を受けた後もしばらくその地にと...

ルソーの静かな食卓 〈3〉

 近代の思想家たちに影響を与える作品を残したルソーは、アカデミックな環境とは程遠い環境で育っている。まともに学校に行くこともないまま、13歳の若さで職人の世界に弟子入り。師弟愛などかけらもなく、教育を与えるどころか、弟子に暴力をふるうような親方から逃れるためにルソーが考えたのは、カトリックへの改宗だった。 向かったの...

ルソーの静かな食卓 〈2〉

 18世紀に活躍した哲学者ルソーは、自らがもっとも重要な著書としていた『エミール』(1762年)で、「節制と労働、この二つこそ人間にとっての本当の医者だ。労働は食欲を増し、節制はそれが過度になるのをふせぐ」(今野一雄訳)と書いた。飽食にまみれた現代人には耳が痛いこんな一節を書いたルソーは、一方で、人生で味わうことの出...

ルソーの静かな食卓 〈1〉

 ジャン=ジャック・ルソー(1712〜1778年)は、18世紀のフランスを舞台に活躍した異端の思想家だ。ヨーロッパ中でベストセラーになった恋愛小説『新エロイーズ』(1761年)、自由な社会について論じた『社会契約論』(1762年)、独自の教育論が注目を集めた 『エミール』(1762年)といった大作は、当時の社会に衝撃...
 

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