Auguste Herbin – le maître révélé 1882-1960
モンマルトル美術館は、「忘れられた重要な芸術家」を再発見させてくれることが多い。今回もその一人で、具象→キュビズム→抽象→具象→抽象へと作風を変化させたオーギュスト・エルバンだ。生前は国際的に評価されていたが、後輩の抽象画家たちの影に隠れてしまったのか、死後、忘れられた。
マティスの出身地ル・カトー・カンブレジに近い北仏キエヴィ村で生まれた。リールの美術学校で学んだ後、1901年にパリに出た。印象派の影響を受け、独自の色彩感で異彩を放った作品は1904年からヴィルヘルム・ウーデなどのコレクターや画商に注目された。点描で描いた1901年の「リールの夜景」には、すでに色彩感覚の冴えが見られる。
1908年からピカソやブラックと共にキュビズムの第一線に立つ画家となったが、背景が抽象、主体が具象という独特の絵を描いた。その一つが、キュビストたちが滞在して有名になった仏南西部セレの町の風景画だ。10年後キュビズムから離れ、幾何学抽象を始めた。1920年代に具象に戻り、その後また抽象へ。
ゲーテの色彩理論を学び、鮮やかな色彩の対比と幾何学造形で新たな地平を開いた。バッハの「フーガ」から着想し、アルファベットの一つ一つの文字に色と形、音を組み合わせたのもこの時期だ。1942年に完成したこの「造形のアルファベット」理論を適用して描いたのが、70年前に描かれたことが信じられないほど現代的な「香水No.2」(1954)だ(冒頭画像)。
戦後の抽象美術家たちに大きな影響を与えたエルバン。ル・カトー・カンブレジのマティス美術館には約90点が所蔵されている。(羽)同展は9/15まで
Musée de Montmartre
Adresse : 12 rue Cortot, 75018 Paris , Franceアクセス : M°Lamarck-Caulaincourt
URL : https://museedemontmartre.fr
10h-19h。15€/8€。