ハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスティーンの性暴力スキャンダルから1年。#MeTooのハッシュタグで性暴力を告発する運動は世界各地に広がった。フランスでも直ちに#Balancetonporc(豚を告発せよ)というハッシュタグがつくられ、数多くの証言がツイートされた。DSK事件(2011年)など政治家の性暴力が暴露されても大きな運動は起きなかったが、Me Tooは大勢の女性が発言・発信する契機となった。DVヘルプのフリーダイアル3919へのアクセスは2017年10〜12月、前年の同時期に比べて21%増。性暴力犯罪の提訴は2018年1〜7月、23%増加した(内務省発表)。
この歴史的な動きに対して、アメリカで性暴力疑惑の男性が最高裁の判事に任命されたように、(男)社会のバックラッシュは激しい。フランスでも人種・性差別発言を問題視される人物などが、Me Tooを「たれこみ」だと批判した。また、女優のカトリーヌ・ドヌーヴなど100人の女性が連名で「言い寄る自由」を擁護する声明をルモンド紙に発表し、論議を醸した。しかし、パワハラと同じく性暴力は社会的・経済的に弱い立場の人間に振るわれ、性差別から生まれるのだから、現実を変えなくてはならないとフェミニストたちは要求する。
その現実とは、62%の女性が 「自分が望まない性関係」を持ったと答えたこと(女性の性生活に関するマリ・クレール誌/CSAによる調査、今年5月発表)、3日に1人の割合で女性が現在・過去のパートナーに殺害されていること(国の性暴力防止機関発表)、レイプされた女性の1割しか提訴できないこと、有罪判決が稀なことなどである。「同意consentementという言葉が使われるが、明確な合意accord expliciteがない場合は性暴力とみなすべき」と哲学者のジュヌヴィエーヴ・フレスは主張する。この表現を法律に取り入れたスウェーデンやカナダなどに比べ、フランスは遅れていると法律家のカトリーヌ・ル・マグレスも指摘。実際、シアッパ男女同権担当大臣の告知にもかかわらず、今夏にできた法律は不十分だった。性暴力犯罪を被害者が提訴できる期間を成年以降20年から30年に引き延ばし、3919の相談係を3人増やしたが、未成年の擁護や性暴力防止教育に関する政策・予算に進歩はみられなかった。
そこで#NousToutes(私たちみんなで)という合言葉のもと、600人の女性が性暴力と性差別撲滅を要求する行進を呼びかけている(11月24日)。性暴力は個人の枠を越えて社会全体で克服すべき課題なのだ。(飛)