マクロン大統領とビュザン保健相は9月18日に医療制度改革の内容を明らかにした。病院の混雑、精神病棟の人手不足、医療過疎地など近年さまざまな問題が噴出していたため、政府の対応が待たれていた。医療保険の支出を2019年度で4億ユーロ追加、2022年までに計34億ユーロの追加予算を充てるとしている。
まず直近の措置としては、医師不足の医療過疎地で地元公立病院が400人の一般医を雇って配置する。現在フランスで活動する医師は22万6000人で、前年から6794人減少。過疎地では引退する開業医の後継者を見つけるのが難しい。国民の25%が一般医、38%が専門医を近くで見つけるのが困難になったという調査結果もある。開業への支援金や、過疎地開業を条件とした医学部学生への奨学金、ネットによる遠隔診療の促進など様々な措置が取られているが、十分な効果は上がっていない。開業医を雑務から解放するために、医療補助員を付ける既存対策をさらに拡大し、複数の医師が運営する共同診療所に4000人の補助員雇用を医療保険金庫からまかなう措置も改革に含まれる。
病院の医師・スタッフ不足も今春メディアでさかんに報じられた。全国650の公立・民間病院のうち97でベッド数が不足し、緊急でない手術を延期したり、患者を廊下で運搬用のベッドに寝かせたりするなど許容能力に重大な問題があることが問題視された。過酷な労働に見合わない給与のために救急医も不足している。今回の改革では、町の開業医が地域ごとに2022年までに全国で1000のネットワークを作って順番で20時まで診察するよう調整し、病院の救急科の混雑解消を図るようにする。
医学部1年目の共通課程(医科、歯科、薬学、助産師)終了時の試験で8割の学生を振るい落とす悪名高い「定員制限」が2020年9月に廃止される(2017年の定員は医師8205人、歯科1203人、薬学3124人、助産師991人)。詳細は決まっていないが、医学部の定員をやや引き上げ、共通課程を廃止して医科、歯科、薬学、助産師それぞれの学士課程を設け、各学年の試験で学生を選抜していく案が有力なようだ。実現すれば、9月に封切られた映画 「Première année」(トマ・リルティ監督)のような医学部1年目の過酷な生活は解消されるかもしれない。(し)