50年前と、今のフランスがダブって見える。一握りの大学生の運動に端を発して大学が占拠され、さらに工場の占拠が1千万人のゼネストに膨み、国全体が麻痺した1968年5月。今日も、学生たちは、半世紀前「5月革命」の舞台となった大学を占拠して、鉄道、航空、司法、病院、退職者、高校生など政府に意義を唱える人たちとの「共闘」を呼びかけ、デモを共にしている。
68年5月は「アリの巣を叩いたようだった」と、当時を知る人は言う。地中の多くの巣の中にいたアリたちが巣を壊されて怒り、堰を切ったように地上に出てきて一つの大きな集団になる。そして皆が自由に、そこらじゅうで議論しているようだったという。
ベトナム戦争への抗議、公民権運動、女性やホモセクシャルの権利要求…アメリカや他都市で興った若者の抗議運動にも呼応した、フランス戦後最大の社会運動「5月革命」は、労働条件の向上や大学の改革などをもたらした。しかし他にもじっくりと、広範に社会の雰囲気や、個々の人間関係などを変えた。 政府は、今、大学で運動する学生を「少数派の扇動家」だと言う。でも少数派の彼らは、少なくとも、自分たちの社会は自分たちが変えるものだと認識している。そんな5月、50年前の5月を振り返ってみた。(六)
取材・文:羽生のり子、林瑞絵、佐藤真