マクロン大統領就任100日の評価を論じる記事が8月12~14日のフランス主要紙に相次いで掲載された。当選1年前には党も持たなかったマクロン氏が彗星のように現われて大統領になったが、支持率が落ちるのも速かった。当選直後の支持率62%がわずか3ヵ月で36%。2012年同時期のオランド大統領の46%を下回る。
右でも左でもない」政治運動を興して政治勢力図を書き換えたマクロン大統領は、内外からの注目を集め、まるでフランスの救世主であるかのように登場した。その勢いで国民議会議員選挙でも大勝し、国際舞台もそつなくこなした。だが、政界モラル向上法案を提出した本人、バイルー法相が架空疑惑問題で同じModem閣僚2人とともに閣僚を降りたことが最初のつまずきになった。そして、6月末に会計監査院が財政赤字は国内総生産の3.2%と発表したあたりから予算問題で齟齬 (そご) が目立つように。フィリップ首相が施政方針演説で45億ユーロの財政節減のため、富裕税減税と世帯8割への住居税免除を2019年以降と述べた直後に、政府は18年からと訂正。一般社会貢献税(CSG)の税率引上げ、住宅手当の減額で国民の不満が噴出。同じく予算問題で、軍事予算の節減方針を政府が発表したことから仏軍制服組トップのドヴィリエ統合参謀総長辞任という事態に発展した。
さらに、大統領の政治母体である共和国前進でも、党則案に反対する約30人の党員が提訴する事態に。党則は8月17日に承認されたものの、党結束の欠如を露呈した。大統領夫人の役割を法的に規定するという大統領の意向も、30万人の署名を集めた反対運動と世論の反対(69%)のため挫折。従来の大統領夫人が勤めてきた役割を文書化するにとどめた。
オルドナンスによる労働法改正を可能にする法は8月に国会で成立し、労使代表者との会談を経て31日には法改正の詳細を示すオルドナンス案が公表され、9月20日には閣議で決定される予定だ。労組CGTとSUDは9月12日にデモを予定しており、オルドナンスの内容によっては大きな抗議運動に発展する可能性もある。大統領選第1回投票でわずか24%と、いわば消去法で当選したマクロンは「救世主」ではなく、「普通の」大統領にすぎなかったということか。過大な期待やイメージ先行が収まった今、真価が問われる時期に来ているのだろう。(し)