カレーの難民・移民キャンプ「ジャングル」の年内撤去の政府方針にともない、24日から約7千人の難民を全国に280ヵ所ある難民一時収容センター(CAO)へ移動させる作業が始まった。24日から26日までに、4014人がバスで続々と「ジャングル」を出発。同時に難民の住んでいた小屋やテントの撤去が行われた。
「ジャングル」には保護者のいない1291人の未成年がいた。仏内務省による交渉で英国はやっと重い腰を上げ、英国に家族のいる未成年を全員受け入れることを承諾し、17〜25日に233人を受け入れた。仏政府によると、英国に家族がいることが未確認の者や、渡航を望まない残りの未成年は、収容施設に保護したという。
10月18日付ル・モンド紙によると、政府は全国の元兵舎、バカンス村、元病院、職業訓練センターなど、難民を収容できる施設を探し、10月半ば時点で7254人の収容分をリストアップした。だが、その人数分の実質的な受け入れ態勢が整っているとは限らない。国民戦線党(FN)寄りのメナール氏が市長を務める南仏ベジエの市議会が受け入れの是非を問う住民投票の実施を決めたように、国からの割り当てに抵抗する自治体もあれば、市町村が賛成しても安全が脅かされると住民が反対運動を繰り広げる場合もある。9月にオーベルニュ・ローヌ=アルプ地域圏議会議長であるヴォキエーズ共和党臨時総裁は同地域圏への計1784人の難民受け入れ割り当てに反対し、圏内の市町村に抵抗を呼びかけた。住民の反対運動がFNや一部右派に政治的に利用されているケースもままある。
逆に、地元のサッカーチームに難民を迎えたベルナーヴ町(アリエ県)のように難民受け入れがスムーズにいった市町村もあり、難民支援団体や大学がお金を出して学業を継続したい難民を受け入れる動きもある。リール大学は10月18日に「ジャングル」から80人の若者を受け入れたし、グルノーブル=アルプ大学はネットで募金を呼びかけるクラウドファンディングで資金を集めるなどして難民を学生として受け入れている。
10月3日付のリベラシオン紙の表紙「難民――2つのフランス」のように、人道的見地から歴史的に難民を受け入れてきたフランスと、自分たちの静かな生活が乱されるとして難民を拒否するフランスに、この国は引き裂かれているのだろうか。(し)