啓蒙と革命の時代をくぐり抜け、約400年にわたってパリジャンの憩いの場となってきた5区のパリ植物園。ここで毎春、一本の日本の桜が来園者の目を喜ばせている。
フランスでよく見かけるピンクではなく、まっ白い花びらをつける八重桜「白妙(しろたえ)」だ。高さ8メートル、幅12メートル。見ごろは、毎年3月末から4月の頭で、今年は4月8日頃が満開となった。
澄み渡る青空のもと、末広がりの「八」の字をさらに大きく広げたおめでたい形で、満開の花を揺らしている。仄(ほの)かな芳香に誘われたミツバチたちが、ひっきりなしに蜜を吸いにやってくる。
「実は、いつ植えられたのか、正確な記録が残っていません。ミステリアスな桜なのです」と語るのは、植物園ディレクターのエリック・ジョリさん。昔の資料写真集を紐解くと、戦前はこの場所に桜はなかった。木の大きさから、おそらく60年くらい前に誰かが寄贈し、植えられたと推測される。
「植えてくれた人に感謝ですね。今は大きく横に広がり、道を少し塞ぐほどですが、枝は切りません。そのままが美しい、自慢の桜ですから」。(瑞)
Le jardin des Plantes :
57 rue Cuvier 5e