トルコからギリシャの島に到着した難民・移民が、4月上旬、欧州連合(EU)がチャーターした船により、初めてトルコに送還された。EUへの移住を目指し、トルコから渡航する難民・移民が後を絶たないことを受け、トルコとEUの間で先月交わした合意によるもの。EUは危険な密航を防ぐ目的としているが、人権団体は人道的な問題があると指摘している。
ギリシャ政府によると、合計約300人がフェリー数隻で、ギリシャのレスボス島などから、トルコ西部のディキリ港とセスム港に送還された。3月20日以降にギリシャ沖に到着し、難民申請をしないか、申請が受理されなかった人が対象。大半はパキスタン人で、シリア人は2人だった。トルコに到着後は、難民キャンプに一次的に収容された後、難民申請が受理されなければ、本国へ強制送還される見通し。
5日のル・フィガロ紙は「ギリシャから送還された最初の移民、トルコに到着」という見出しで伝えた。
EUとトルコの合意では、EUは、トルコに移民1人を送還するごとに、トルコにいるシリア人難民1人を受け入れる。トルコ領内からのEUへの難民申請を促し、危険な渡航を阻止するのが狙い。合意に基づき、ドイツやフィンランドなどに4日以降、トルコからシリア人難民が到着し始めている。
しかし、アムネスティ・インターナショナルは「トルコの難民の受け入れ環境は悪化しており『確かな国』ではない現実に、EUは目をつぶっている」と指摘。国境なき医師団は「ヨーロッパで安全を求めている人への解決策にはならない」と釘を刺した。移民船が出航した港では、人権活動家が「EU、恥を知れ」と書いた横断幕を掲げた。
国際移住機関(IMO)によると、昨年トルコからギリシャに渡航した難民・移民は85万人、今年に入ってからは15万人にのぼった。地中海を渡航中に死亡した人は、昨年3700人に及んだ。ギリシャに到着後、陸路で北欧や西欧を目指そうとしたが、バルカン諸国が国境を閉ざしたことにより、ギリシャとマケドニアの国境付近には、1万1000人が留まっている。(重)