民俗学者となって〈物体X〉の正体を探る。
芸術の歴史はとかく欧州至上主義に傾きがち。パリ7区のケ・ブランリ美術館は、そんな歪みを矯正するという大事なミッションを担う。所蔵作品数はルーヴルに匹敵する30万点。そのうちの約1%、約3500点が常設展示される。展示スペースはアジア、アフリカ、オセアニア、アメリカ大陸と4エリアで構成。文化が互いに影響し合うことを示すべく、エリア間に仕切りはない。古来から続く文化のダイナミックなうねりを感じられるだろう。
本美術館は幼児から中学生に向けた子ども向けアクティビティを用意。今回は9~12歳が対象のアトリエ「LesExperts」を見学した。まず子どもたちは〈異国の地で発見された、謎の物体X〉を観察する。登場するのはカラフルなビーズが施された木製の芸術品。子どもたちは白手袋をはめ、民俗学者さながら観察し、その用途を推測する。「派手な帽子?」「コップ?でも安定感がないな」。感想を言い合うが、答えに自信はなさそうだ。ひと通り考え抜いたところで、この物体に関する質問表が配られる。そしてこの紙とともに、ガイドさんと展示スペースへ移動。無数の展示品の中から本物の〈物体X〉探すのだ。館内は全長150メートルと広いので迷いそうだが、なんとかアフリカのエリアで、〈謎の物体X〉が発見された。説明書きには毎日使用できる意外な生活実用品の名が。子どもたちは納得した様子だ。ここで質問表を埋めながら理解を深めてゆく。最後は研究発表にも挑戦。最初から最後まで子供たちの積極的な参加が求められるのだ。“楽しくてためになる”典型のようなアトリエだろう。ケ・ブランリは今年で開館10周年。充実の子ども向けアトリエとともに、ますます家族連れの強力な味方となってくれるはずだ。(瑞)
Musée du quai Branly
アトリエは水14h30~、土日は11h~に実施。バカンス時期は毎日。アトリエ参加費8€。日本のてるてる坊主が登場する幼児向けのアトリエ 「La Pluie」も人気。他にも物語付きガイドなど、子ども向け企画が充実。
予約:01.5661.7172
www.quaibranly.fr