中世のヨーロッパにおいてスパイスは希少で、ほんの微量でも目の飛び出るような価格で売られていた。スパイスは古い食材の匂いや味を隠し、殺菌・保存し、消化を促し、病の治療に役立つので、諸国はこの万能なスパイスをこぞって入手したがった。ヨーロッパはハーブは豊富でもスパイスは育たないため希少価値が高まり、価格が高騰したのである。当時の食生活は、野菜に不足した単調な肉料理が主流だったが、コショウ、クローブ、シナモン、ショウガなどで味付けをすることで料理の多様化をも可能にした。偉大な探検家たちがスパイスの獲得を目的に新天地を求めて航海に出たのが大航海時代の始まり。スパイスは貿易を行った国々に膨大な利益をもたらし、植民地や国の領土拡大へと発展していった。「スパイスを制するものは世界を制す」時代の到来である。(み)