フランス人は「は・ひ・ふ・へ・ほ」の〈h〉という子音の発音が苦手。いくら「Fleurは、はな」と繰り返し教えても「あな」になってしまう。これは唇の形が違うからではないのか、という説もある。
言い換えれば、フランス人の唇は、フランス語特有の〈r〉や〈u〉といった母音や子音の発音を繰り返しているせいで、それに適した形、上唇が薄く、ツンと唇の先がとがった形が多くなる。フランス語は、唇を緊張させることへの必要度が非常に高い言語に思われる。それに引き換え、日本語は、比較的単調なリズムで抑揚も少ないためか。それを話す日本人の唇は、厚みや形もあまりこれといった特徴がなく、さまざま。でもどこか口元が下がり気味の人が多いようだ。ふつう口元が下がっていると、周りからは「不満そう」と思われがちで、反対にキュッと上がった口元は、微笑んだようなチャーミングな表情に見え、フランス人のような唇は初対面の人に好印象を与える。日本人でも、何十年とフランス語を話し続けていたら、唇の形が変化して、こんな締まりがよい唇になってくるのだろうか。
「フレンチキス」という言い回しは、あまりにも有名だが、別にこれは唇の形とは関係ない。「ディープキス」のことを、イギリス人が「フランス人がお得意」というニュアンスで「フランス風キス」と名付けたものだ。
こんな締まった唇を持ったフランス人も、『女性の色気は、ぽってり厚い唇』とあこがれ、シリコンを注入して唇を整形する人も多い。
先日ドイツから帰ってきたフランスの友人は、ドイツ人の唇は、冬場は寒さから唇がギュッとしまって薄くなり、夏場は暑さでガムのようにぶよーんと伸びたようになっていて奇妙だったと語っていた…。(有)
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