世界保健機関WHOによると、4月メキシコで発生した豚インフルエンザは南半球から北半球へと広がり、8月末現在177カ国で約21万人が感染、2185人死亡(米州1876人、欧州85人)、フランスでは9月10日現在、約6千人が感染、14人死亡(ニューカレドニアで7人死亡)している。
日本では9月5日までに休校・学級閉鎖が772校。フランスでは9月4日ブーシュ・デュ・ローヌ県にある託児所の職員一部が感染し閉鎖。5日、ヴァル・ド・マルヌ県の高3学級の8人が風邪気味で病欠したため同学級は6日間閉鎖、生徒らは自宅でウェブ通信授業を受けることに。10日現在、全国で約10校が閉鎖。新学期早々のインフル騒動で父兄、保育士、教職員は神経を尖らせている。
このA型インフルエンザは、普通の流行性感冒より10倍早く進行し、妊婦や若年層が感染しやすく、なかでも肺疾患者の感染による死亡率は50~60%と背筋が寒くなる予測を専門家らが発表。ちなみに1957年の悪性流行性感冒で400万人が死亡。でなくても毎年風邪による国内死亡者は5、6千人にのぼる。パニック状態のバシュロ保健相は、A型インフルによる年内の国内感染予想数を2千万人(人口の1/3)、死亡者数2万人とみており、未知の「敵」を前に各界総動員で異常なまでに万全を期す対策を練っている。
テレビやラジオも「くしゃみやせきの時は口を腕やティッシュで覆い、使ったティッシュはすぐに捨て、ひんぱんに手を洗おう」と予防キャンペーンを張っている。関係省の8月28日付通達によれば、1学級で最低3人が感染した場合、知事はその学級か学年または全校を最低6日間閉鎖できる。閉鎖期間延長の場合は国営ラジオかテレビ局5チャンネルあるいはウェブによる在宅学習を奨励。しかしそうなったら共稼ぎ所帯の児童は誰が世話するのか、アパート内に感染者が出たら誰が買物などして助けるのか…と隣人同士の連帯サイトwww.voisinssolidaires.frまで登場。とくにホテルやレストランなどの病欠社員のため超過勤務を強いられる他の従業員の超過勤務手当はあるのか、毎日議員他、職員2千人余が出入りする議会も閉鎖するのか…とまるで戦時態勢に入ったよう。
政府は10億ユーロの予算で9400万の接種量のワクチンを製薬会社4社に注文し、優先的に医療関係者や妊婦、幼児、喘息や糖尿病患者など約1500万人に、10月中旬ごろから投薬する構えだ。ワクチンは最低3週間内に2回の接種が必要とされ、集団接種は病院でなく体育館など公共施設を利用するという。感染の疑いのある市民が病院に殺到するのを避けるため初診は町医者に任せ、症状により入院、隔離させる方針。
企業に対しては、社員用にマスクの購入を勧め、会議・出張を極力少なくし、社員の在宅業務を奨励している。こうした状況のなかで市民は、友人同士の挨拶代りの頬へのキスや握手は極力さけ、話す時もすこし距離をおいたほうがいいとか…。(君)
画像:8月13日付リベラシオン紙の表紙。