またまた640号で取り上げたヴィレム。ごめんなさい。でも好きだからしょうがない。プレゼントにもらったばかりの『肛門交響曲集』は、人間が所有する穴たちの可能性についてつくづく考えさせられる! 快感、時には悪感と共に慣れ親しむ穴たちの話だけに、せりふなしで~す。
表紙は読者にとって踏み絵。見つめながら「おえっ」とたちまち吐き気をもよおす人。目元に寄った笑いじわを隠そうと必死になる人、思わずよだれが流れ出るのを止められない人…。
交響曲第1番は、うんこが我慢できなくて開かないトイレの扉をけ破った旦那の話。中ではかみさんがその最中。二人を同時に満足させる手段は? という他愛のない家族ドラマだけれど、ボクらの体を貫く管の役割についての辛口のフィロソフィーになっている。
傑作は第7番。地下鉄の中で大笑いして好奇の視線を浴びてしまった。中国人がはりつけのキリスト像をゴミ箱にポイッと捨てる。そのゴミ箱にノラ犬がうんこ。他の犬たちも周りにうんこ。そのうんこたちをモミの木と勘違いして、サンタクロースのそりを引いたネズミたちがやってくる…。こんな短い交響曲が次から次へと続いていくけれど、ヴィレムの線はどこまでも明るいから、臭みなし、からからっと春の陽気です。(真)
Cornélius社発行。15.5€。