毎号、話題の人物の写真が表紙を飾る週刊誌が〈パリ・マッチ〉。3月26日発行の3123号で60歳になった。
1949年3月25日、チャーチルの写真を表紙にして産声を上げる。大きく写真を扱ったルポで名高い米国の〈ライフ〉誌をモデルにし、「家族で楽しめる」、「列車の中に誰も置き忘れることのない」週刊誌を目指す。1950年夏、アンナプルナ登頂に成功したフランス隊モーリス・エルゾーグの写真を表紙に使った74号で32万部を売り、軌道に乗る。50年代は発行部数は伸びる一方で1958年には180万部を超えるが、その後下降線をたどり、1975年には60万部を割ることになる。現在は約63万部。
これまで表紙に登場した人物を見てみると、アラン・ドロンが45回、ブリジット・バルドーが39回、故ミッテラン大統領が34回、ジャッキー・ケネディーが25回…。編集方針が、報道的なルポから、映画スターや政界人の私生活をのぞき見するルポに重心が移ってきている。モナコ公国のカロリーヌ妃やステファニー妃などは、表紙に繰り返し登場して多額の収入を得たという。最近では、元トップモデルのカーラ・ブルーニと結婚したサルコジ大統領が、何度か表紙で笑顔を振りまいている。
表紙や記事をめぐってのトラブルも多い。イラク侵攻の際には、米国の爆撃を強調するような写真修正で事実を歪めたり、2007年夏には、水着姿のサルコジ大統領のたるんだおなかのぜい肉を削るという修正を、編集長自身が行ったりしている。最近では、社会党の大統領候補だったセゴレーヌ・ロワイヤル氏が恋人と歩いている写真を表紙にし、ロワイヤル氏から「写真掲載には同意していない」と訴えられて敗訴。ロワイヤル氏に16000ユーロを支払わなければならなくなったが、それだけの額を支払っても発行部数が増えれば、十分採算がとれている、という声もある。
この60歳誕生号の目玉の一つは、「極北のアイスバーグを救え」というスローガンでグリーンランドの氷原の上に描かれた70m×36mという巨大な〈パリ・マッチ〉のロゴ。使われたペイントはエコペイントで、溶剤は一切使っていないと自慢しているけれど、商業的目的で、人類共通の宝ともいえる氷原を利用する態度がいちばんの問題だと思うけれど、これが〈パリ・マッチ〉的?(真)