Poires au vin
フランスのナシは、8月のウイリアムスに始まり、2月、3月くらいまで種類も豊富に八百屋の店頭に並ぶ。もちろんそのままでもおいしいけれど、フランス人は、砂糖煮、ワイン煮、クラフティ、タルト、シャーベットなど、さまざまなデザートにしても楽しむ。 今回はお酒が好きな人にも喜ばれる赤ワイン煮を作ってみよう。
ナシは、今ごろはブール・アルディ種やコミス種がいいだろう。熟してはいるけれど、身が締まっているものを選びたい。柔らかすぎると、火を通したときに煮くずれてしまう。へたを残して皮をむき、丸ごと煮てもいいけれど、ボクは、味がよく染みわたるように、ナシの皮をむき、二つに切り分けてからへたと芯を取りのぞく。
次はシロップの準備。大きめのナシ6個を煮るんだったら赤ワイン1瓶が必要だ。これを大きめの鍋にとる。黒スグリcassisやブラックベリーmureなど赤い果実のリキュールを200cc、砂糖80グラムを加える。これを中火にかけ、砂糖が溶けたら、シナモンパウダー小さじ半杯、丁字2本を加える。沸騰したらナシを加え、再び沸騰したら弱火に落として、ナシの大きさ次第だが15分から20分くらい火を通すと、ちょうどよい柔らかさ。ぐちゃっとなっては煮すぎ。網杓子などを使って丁寧にナシを取り出し、ボールにとる。
残ったシロップを強火にかける。コンスターチを小さじ1杯ほど、少量の水に溶いてから加えて、とろみをつける。これをナシの上からかけ、冷めたら、ラップフィルムで包んで冷蔵庫に。2、3度ひっくり返しシロップがよく行きわたるようにし、すっかり冷たくしたい。翌日まで待てたらさらにおいしくなるだろう。
ボールごと食卓に出して取り分ける。バニラアイスを添えたらさらに豪華。ナシの香りも加わった、おいしいおいしいシロップも味わえるように大きめのスプーンを添えましょう。(真)
ナシ6個、赤ワイン700cc、赤い果実のリキュール200cc、砂糖80g、シナモンパウダー小さじ半杯、丁字2本、コーンスターチ小さじ1杯。
●洋ナシさまざま poires
ウイリアムスwiliamsは、8月から10月にかけて出回る早生のナシ。香りはナシの中でもトップクラス。甘さも上品だ。このナシからは蒸留酒も作られ、食後酒の花形。冬や春に見かけるウイリアムスは、チリなど南米からの輸入もの。
ブール・アルディbeurre Hardyは、9月から12月にかけて出回る。オリーブ色がかった厚い皮の下の果肉には甘さが詰まっている。
comiceは、10月から2月にかけて出回る、大きめのずんぐりとしたナシ。白く柔らかな身は、軽い酸味があって素晴らしい風味。
conférenceは、10月から3月くらいにかけて出回る、ほっそりとした形のナシ。なめらかな口当たり、甘くて香りも高い。
パス・クラサンヌpasse-crassaneは、12月から4月にかけてと、いちばん遅く出回る。身がちょっとざらざらしているのが欠点だが、果汁に富んでいる。
ナシは、収穫されてからも少しずつ熟していくので、少し固めのものを買っても構わない。2、3日後には食べごろになるだろう。熟しすぎると、芯から茶色になってまずくなる。
●洋ナシのシロップ煮
今回のレシピのように、ナシの皮をむいてから半分に割ってへたと芯をとりのぞく。鍋に、水1リットルと砂糖150グラムを入れる。縦割りにしたバニラビーンズ半本も加え、5分ほど沸騰させてシロップの風味がよくなったら、ナシを加える。もう一度沸騰したら弱火にして15分煮る。この砂糖蜜の中で冷まし、芯までうまさがゆきとどくようにしたい。このままでもおいしいが、バニラアイスクリームを添え、さらに熱いチョコレートソースをかければ、ポワール・ベル・エレーヌと呼ばれる素敵なデザートになる。