フランスは世界でいちばん精神安定剤や睡眠薬の需要が高いといわれている。職場でのストレス、工場の国外分散化による解雇、失業、離婚、家庭内暴力…とノイローゼ、うつ病に陥る要因が絶えない。 世界保健機関とフランスの厚生省が協力し、1999年から2003年まで4年間にわたりフランスの18歳以上の3万6千人を対象に街頭で初のアンケートを行い、その結果を10月22日に発表した。調査によると、回答者の11%が調査前の2週間内に偶発性うつ病に、12.8%は6カ月間内に不安神経症にかかっている。一般的に女性及び独身者のほうが偶発性うつ病にかかる率が高く、未亡人や離婚女性は婚姻者より2.2倍、独身者は1.5倍。失業者も一般より2.2倍と高い。 また回答者の7.8%(男性6.4%、女性9.1%)は今までに一度は自殺を図ったことがあるという。フランスでは毎年約1万1千人が自殺し、約16万人が自殺未遂。 上記の調査とは関係ないのだが、テロなどによって受ける心的外傷も無視できない。 1995年にRERサン・ミシェル駅を襲った爆弾テロで、その場に居合わせた数百人が心的外傷を負った。1997年に心理救護班が設置され、大事故の現場には緊急救助班とともに同班も駆けつけるようになった。 10月27日付のルモンド紙は、近年警察官の間でもカウンセリングの必要性が増していることを報道している。内務省は、すでに警察官向けの心理カウンセリング網を設けている。つい最近、ナントの警察署内で深夜、酩酊状態の警官が過って発砲し同僚を死亡させた事件で、他の同僚らはあまりのショックを受けたため数時間後にセラピストに来てもらい、ある者はそれ以降もカウンセリングを受けているという。 特に地方出身の若い警察官は、郊外で激化する犯罪の取締りで青少年犯を射殺しかねず自分の命も危険な状況に置かれることへの不安に襲われる。また離婚率が平均より高いといわれる彼らの不安定な私生活なども重なり、うつ状態に陥る警察官も多いという。今年6カ月間でカウンセリング窓口に10550件(03年比+17.5%)の電話があり、そのうちの4300件はセラピストによる治療を必要としている。警察官の1%(約1300人)は3年から5年の長期病欠にあり、その3分の2は抑うつ症だ。1996年には71人もの警察官が自殺し、現在も年に30~40人が、多くはピストル自殺しているという。 警察官が直面する日常と現代のうつ病症候群とが表裏一体をなしていないか。(君) |
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