●L’ Examen 大学入試会場に集まる若い女性たちを通じて、イラン社会の現代をドキュメンタリー風に生き生きと描いた作品。監督はナセール・レファイ。 すれた感じの金持ちの娘、人生の辛酸とは縁がなさそうな娘っ子、夫に殴られたあざを隠す人妻、乳飲み子と試験会場に乗り込む母親…。「容姿端麗、でなければ学業に専念」と車椅子の娘が美しい娘に嘆息し、「将来を邪魔するような夫ならすぐに離婚しなさい」と初老の女性が若い娘をさとす。そして、娘や恋人を支援する男性は、この社会が変わりつつあることを暗示する。大学後の将来は? という心配より、今は「勉強できる」という希望が彼女たちの笑顔を明るくする。(海)
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●La jeune fille a la perle 17世紀オランダの町デルフト。画家フェルメールの家に、一人の女中がやってくる。彼女の透明な美しさと絵画への理解は、画家をキャンバスへと駆り立て、やがて一枚の絵が誕生する。 こぼれ落ちる一瞬を永遠に封じ込める天才画家の世界をみごとに映像化したのは、ピーター・ウェバー監督。謎に包まれた画家の生涯に、大胆にも雄弁な新解釈を加えてみせた。女中が、画家にスカーフで隠されていた髪を見つめられ、真珠の耳飾りを付けるためにピアスの穴を開けられる瞬間、単なる画家とモデルという関係を越え、少女が女性に変わる厳粛な儀式となる。あらためて本物の『真珠の耳飾りの少女』を見ると、フェルメールも、このモデルを想っていたのだろうと、淡いロマンに思いを馳せたくなる。(瑞) |
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●Une visite au Louvre セザンヌの言葉を書きとめた若い詩人、ジョアシャン・ガスケの文章を出発点に、ダニエル・ユイエとジャン=マリー・ストローブが私たちをルーヴル美術館へと案内する。アングルを、ヴェロネーゼを、ティントレットを、ドラクロワを賞賛するセザンヌの生き生きとした表現を耳にしながら、ストイックともいえるストローブたちの映像、新しい絵の鑑賞法に開眼、触発される贅沢さ。
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●Gerry 本国でたたかれながらもヨーロッパで激賞されたガス・ヴァン・サントの傑作がようやく公開。仲間二人でなんとはなしに砂漠地帯に足を踏み入れるが、歩けども歩けども出口なし…。 マット・デイモンとケイシー・アフレックが共同脚本で名を連ねる本作は、余計なものがそぎ落とされ、シュールで不思議な後味を残す。この映画的実験を助走とし、サントは一年後にあの『エレファント』を撮る。(瑞) |
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Scarlett Johansson
『ロスト・イン・トランスレーション』の世界的ヒットで、一躍時の人となったスカーレット・ヨハンソン。公開中の “La jeune fille a la perle” では、光と影の画家フェルメールにインスピレーションを与える、慎ましくも麗しい女中に扮している。 1984年、ニューヨーク生まれ。3歳にしてすでに女優を志願。ミュージカルが大好きでジュディ・ガーランドに憧れ、自ら演劇学校のドアをたたく。8歳でオフ・ブロードウェイのステージに立ち、1994年に『ノース/小さな旅人』の端役で銀幕デビュー。その後、『のら猫の日記』『モンタナの風に吹かれて』、『バーバー』、『ゴースト・ワールド』など、話題作に出演。映画狂の母親の影響か、「自分自身が10ドルを払いたくないような映画には絶対出ないの」と、こだわりを見せる。 なぜかビル・マーレー、コリン・ファーズ、ビリー・ボブ・ソーントンと、相手役はことごとく中年紳士ばかりで、おじさまキラーぶりを発揮している。”A Good Woman”、”An American Rhapsody” など、公開待機中の作品があとを絶たないが、現在は、ジェームズ・エルロイの小説『ブラック・ダリア』の映画化の撮影に参加。女優の殺人事件を下敷きにした推理小説の傑作で、監督はブライアン・デ・パルマ。(瑞) |
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