●ゴンクール賞 本来なら11月初めに受賞者が発表されるはずだったが、今年は100周年ということで、受賞作に先に他の賞が与えられることを恐れ、予定より2週間も先に発表された。受賞したのは、ドイツの劇作家ブレヒトの最後の愛人であり、旧東ドイツ国家保安省のスパイでもあるマリアを主人公とした小説『La Maitresse de Brecht』(Jacques-Pierre Amette, Albin Michel, 306p., 18,50€)。 |
|
●フェミナ賞 すべて女性の審査員からなり、男性作家のみというゴンクール賞の暗黙の了解に対し、1904年に設立された女性にも開かれた文学賞(つまり来年が100周年)。今年の受賞作は、一時はゴンクール賞候補にもされていた中国出身のフランス語作家Dai Sijieの第二作、『Le Complexe de Di』(Gallimard, 384p., 21€)。長年フランスに亡命していたMuoは、祖国に投獄されている婚約者を救い出すために中国へ戻る。西洋化して、フロイトの精神分析に浸っているMuoの前に立ちはだかるのは伝統的中国、そして判事Diのコンプレックス。
|
|
●ルノドー賞 1926年、ゴンクール賞の発表を待っていた記者たちによって設立された賞。”アンチ” ゴンクール賞ともいわれ、ゴンクール賞のしばし「不当な」選択をただす役割を果たす。今年度の受賞は、Philippe Claudelの『Les ames grises』(Stock, 284p. 18,80€)。第一次世界大戦を背景に、フランス東部での幼児殺害事件を通して描かれる「灰色の魂」。(樫) |
|
|
|
●パリで暮らしてみた — いろいろ絵日記 (すげさわ かよ著 大和書房刊 1400円+税) パリ滞在中、カラーコピーによる手作り新聞『Le Bonjour Journal』を出して、彼女のまわりのパリを書き(描き)綴っていたすげさわかよ。彼女は、この新刊の序で「暮らしてみると、旅行の時は気づかなかった、いろいろなパリの表情がみえてきます。とくべつなものではないけれど、すこしずつ増えていく、暮らしのなかのお気に入り…」と語っている。 ふつうのパリの暮らしの中に、自分だけの美しいこと、楽しいこと、おかしいこと、あるいはおいしいもの…を発見していくのには、手書き(描き)のゆっくりとしたリズム、急ぎ足でない優しい視線が大切だったことが、だんだんとわかってくる一冊だ。(真)
|
|